都市伝説としての上野千鶴子マニュアル

上野千鶴子による東大の入学式スピーチを読んで思い出したこと。

2000年、自分がD1だった時にM2の女子のTさんが東大の上野のゼミかなにかにモグっていた。彼女によると、上野ゼミでは上野直筆による、アカデミック業界でののし上がり方のマニュアルが共有されていたという。

自分はそれを直接目にしたわけではないので、内容については何とも言えない。D1の同期のHくんがそれを読んで、徹頭徹尾、結果(学的成果を上げるという意味ではなく、いかにしてアカデミアの中で広義の権力を掴むかという意味)を出すことだけを考えたものだったとか言っていた。無論、そのマニュアルは女性にしか使えないものではなく、男性でも大いに活用出来るものだったそうな。

付言すると、そのマニュアルを立教の比較文明学専攻に持ち帰った女性M2も、それを見たという男性D1もその後、学的には何の痕跡も残さずに消息不明になっているので、二重の意味で、本当にそんなマニュアルが存在したのか、そのマニュアルは本当に有効なものだったのか、疑問の余地は残る。もちろん、アカデミアから消えた二人は今頃はどこかで幸せに生きているはずだ。その可能性は高い。特にM2の方。

ただ、そのマニュアルの実在云々は別にして、上野千鶴子が権力を握るためには、私には到底出来ないような手でも平気で使うタイプの人物であるということ、少なくとも議論のやり方や大衆の動員のやり方は、いわば「アカデミックな”はあちゅう”」(時系列的には”はあちゅう”が上野の劣化エピゴーネンであるが)なので、件の演説についても、自分はあまり感銘を受けなかった。無論、上野千鶴子は、それくらいのマキャベリズムに徹しなければ女性研究者は生き残る目が無いような時代を生きた人間であるということを割り引いて考えなければならないが。

それと、もしも件のマニュアルが実在していたとして、それを西村玲が読み、実践していたならば、きっと西村は今頃はどこかでせっせと研究を続けていられたのではないか。西村に上野の汚さやズルさの1割でもあれば、と。げに恐ろしきは西村の死さえも自身の権力の養分に(意図したのか結果的にそうなっただけなのかは知らないが)してしまう上野千鶴子である。

こういう人ですからね

西村の不遇を嘆く大学教員が同時に上野千鶴子の演説を持ち上げているのを見て、それらの建前や綺麗事の裏側にあるご都合主義を見抜けない院生たちの行く末に思いを馳せた。

大人って汚いよ基本。

元祖炎上系大学教員たる上野千鶴子の煽りで踊った人たちに対してクールに「読解力」って突き放すこの感じ、膨大な注意事項を精読して正しく理解しなかったお客様が悪いのであって弊社に責任はございませんっていうのにすごく似てて、頭の良いエリートの防衛線の張り方は似るのかもなあと思います。

上野千鶴子と西村博之は私には同じ種類の人間に見えますね。ついでに上野千鶴子を擁護しているインテリさんたちも。

「嘘を嘘と見抜けない人は云々」ってやつだから。そういうのは院生室や研究会の陰険空中戦でお互いわかっている同士でだけやってろ。

ま、とにかくだ。日本の左翼は他人を踊らせるのが上手い人ほど出世するので。最前線の塹壕で泥まみれで正義のために戦うような左翼は口先左翼の養分にされます。気をつけようね。

私から言えることとしては、福野礼一郎先生がかつて書かれたこれを揮毫して壁に貼っときましょうと

中古車買うならクルマなんか見るより売ってる人間よく見たほうが良いと思うよ。

福野礼一郎『ホメずにいられない 2』1999年、双葉社、83ページ

まずは売り手の人間性を見極めること。

本当に読み手の人生のことを考えて良心的に何かを書いたり言ったりする人は、メジャーなマスコミにはほとんど登場しないもんです。本屋で平積みになってる爆売り新書の類に書かれていることは鵜呑みにしない方が良いよ。

私の小説でもそんな話はありますな。

「まあね、そいつらは良いんだよ。どっちみち大したことが無い連中だから。薬にはならないが、毒にもならない。放っておいて良い。気をつけなきゃいけないのは、三ヶ月より先のことを考えられる連中で、それを顔に出さないやつらだ。何故だかわかるかい?」

「いえ、わかりません」

「三ヶ月より先で得しようってなると、相手ともそれなりにじっくり付き合わなきゃいけなくなる。じゃあその、三ヶ月なり半年なり一年なりという間さ、相手にどうやって自分に興味を持ち続けてもらうのか。やり方は二つだ。一つは、お互いが得を出来るような仕組みを作る。もう一つは、嘘でも法螺でも何でも並べて騙す。騙すってことは、良いか、ここが一番大事だ。相手を騙すってことは、逆に言えば、嘘がバレる時には相手の財産を身ぐるみ剥ぎ終わってるってことなのさ」

「なるほど……」

「だから、何考えてるんだか顔に出さないやつで、そうなんですねって言わない奴には、充分に気をつけなさいよ」

「アルソウムの双剣4: 兵站の王」https://novelup.plus/story/686645997/950823796