1:東京芸大の油絵科の二次試験問題
先週バズってたネタを拾ってみます。令和2年度の東京藝大の油絵科の二次実技試験が3日間で「絵を描きなさい」だったという話。
描ける?藝大「奇想天外な入試問題」に隠れた意図東京藝大の絵画科油画専攻の競争倍率は常に17〜20倍、時には30倍以上の年もあるという、日本の大学の中で最も競争率が高い学toyokeizai.net
これについての日本語世界の反応は「さすが芸大」「よく出来ている」など、肯定的なものが多かったようです。
藝大の入試課題がシンプルな一文すぎて受験生の心に突き刺さる「本当に難しい問題」震えちゃったtogetter.com
一方で、欧米の美大の入試との違いすぎる発想に疑問を持つ人もいました。
たしかにそうなんです。
こちらはロンドンにあるゴールドスミス・カレッジという、超名門大学のFine Art専攻BAの入試。どれだけ名門かというと東京藝大なんかもう比較にもならないくらいとだけ。ダミアン・ハーストとか出てるとこですね。
まず国際バカロレアでAAA取ってきてくださいという
Our entry requirements for this programme are usually:
Successful completion of three A-levels, International Baccalaureate or an equivalent qualification
更にこちらのコースも終えてきてねと。いい成績で。
PLUS successful completion of an Art and Design Foundation diploma
Art and Design Foundation diplomaというのはUKのあちこちの大学で開設されている1年間のコースで、まずはここで実技の基本を一通り身につけて来てってことですね。その名の通り。
例えばこういうの。これはUniversity of Arts LondonのADFコース。
Pre-degree coursesGet ready for a creative future! Our pre-degree and foundatiowww.arts.ac.uk
具体的に何をやるか。
Foundation Diploma in Art and Designwww.arts.ac.uk
Diagnostic modeとSpecialist modeを選べて、後者は更に
The specialist mode pathways to choose from are:
Art
Communication
Design
You will gain an introduction to the specialist options within your chosen pathway.
Art:
Drawing and Conceptual Practice
Painting
Photography and Time-Based Media
Sculpture
Communication:
Animation and Film
Graphic Design
Illustration
Design:
Design for Theatre, Screen and Performance
Textile Craft
3D, Product and Spatial Design
という具合にコースが細分化されている。
なるほど面白いですね。ちなみに息子が通っている都立産業技術高等専門学校も1年次は基礎を幅広く学んで、2年に上がる時にどんな専攻かを選ぶカリキュラムでした。
日本だとこの部分が美大受験予備校なんですよね。
デッサンとか死ぬほどやらされるらしいですが、なんかもうそこからして違うジャンルの勉強だなあ。もちろん絵描き職人の育成なら死ぬほどデッサンは正解なんでしょうけど、今は手描き以外の絵描きもいくらでもアリ。AI支援のドローイング/ペインティングツールはこれから凄い勢いで発展するでしょうから、まあ手描きの鬼になるのも良いですけど
「それって19世紀の半ばくらいまででヨーロッパでは終了した発想では?」
というのは思います。本物そっくりに描けるアカデミズム絵画は写真の出現で終わり、印象派から後期印象派、野獣派やキュビスムの時代そして抽象絵画やコンセプチュアル・アート、リレーショナルアートなど、どんどん「手先も大事だけどアタマもね!」の世界になっていったわけですよ。
もちろん、イメージした画像を「これですこれ」というようにして現実化する手先の技も引き続き必要なのは間違いありませんが、UKの入試のようにそれはあくまでも入学前の予備コースでやっておいてくれれば良いよ、くらいの扱いの時代なんだと思います。
なにしろ現代アートのルールを作っているのは欧米ですからね。
そして最後はこれ。
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ピックアップ・アーティストはTiona Nekkia McClodden ティオナ・ネッキア・マックロッデンです。マクロデン、マックロデン。定訳はまだ無いんですよね。それくらい日本では知られていないんですが、NYでは旬の人らしいですよ。