高橋龍太郎『現代美術コレクター』読書感想文

高橋龍太郎『現代美術コレクター』も読了。非常に軽いエッセイで1時間もかからず読めた。あの膨大なコレクションの購入原資は収入の大半と親(医者)の遺産とあって納得。家族はいないのだろうか? 子供が中高私学からの私大医学部だったらさすがにあの規模のクリニックでは無理な気もする。

高橋龍太郎は日本作家限定の人なので作家の評価も彼の趣味を強く反映しているが、日本作家が仮にキャリアアップできても作品価格が40代で頭打ちになるという指摘、その理由は日本作家のほとんどが外国市場に進出し(ようとし)ないからだという解説は重要だろう。

たしかに本書で高橋龍太郎が天才と褒めちぎっている近藤亜紀、CVを見ても国内オンリー作家で、作品価格は「安っ!」となる。これだけ(国内で)知られた作家でシュウゴアーツなんて有名ギャラリー契約でこの値段はあんまりじゃないのか?

松井えり菜も3000ドル(40万円前後)でアノマリーから何枚も売りに出てる。

彼女も国内では勝ち組キャリアなんだけどCV見ると完全国内限定作家。たしかにNY在住で1枚8000ドルで売るのと、豊島区在住で1枚3000ドルで売るのとなら、生活レベルは同じとも言えるが……

このクラスの人たちがバリバリに海外で目立ちまくって価格の底上げをしてくれたら、日本の現代アート作家で「食える」人の数が増えるんじゃないかと思うんだけどな。

あと、まともなギャラリーでSolo Exhibition3回、美術館でのGroup Exhibition歴有りの作家なら手放す時に値段が残っている可能性がまあまあある、海外の美術館での展示歴があればなお良いという指摘は大切。いまSNS広告を大量にぶっこんで「現代アート」売ってるギャラリーの作家の大半はこれに(略

高橋さん基準なら田中武は値段残るぞ?

百貨店に入ってる画廊がコンテンポラリーアートですっていって売ってるやつ、全部とは言わんけども「これは似てるけど違います」って作家が混ぜてある割合がなかなか愉快な……

現代アート投資ぷちブームで素人ディーラーが素人を騙すみたいな凄い状況になってる日本ですかね。

セカンダリマーケットで値段ほとんど残らないの買う前からわかりきってるものを招待セールで素人に売りつけるみたいな商売、お好きですよね。

ま、勉強しない人が無駄金を使うのは良いことですけども。

勉強したい人は無内容な現代アート入門新書読むより拙サブスクをどうぞ