福島市サンチャイルド炎上事件・参戦諸将の得失点表

ツイッターで炎上していた福島市のヤノベケンジ作「サンチャイルド」ですが、木幡市長があっさり撤去を決断して一件落着となりました。
この戦いに参加した各方面から勝利の雄叫びとか、それで良いのかというボヤきとか色々と流れていますが、特に攻め手側に現代アートについてあまり詳しくない方々が多いように見受けられますので、現代アートワールドの仕組みも計算に入れた上で、参戦諸将の得失点を考えてみたいと思います。
ヤノベケンジ:+2
まずは守備側のトップ、ヤノベケンジ氏。
今回の騒ぎで失ったものは・・・・無いですね。
得たものは、知名度と言及機会。
寄せ手が繰り出した攻撃は全く彼にはダメージを与えていないですね。
何故そう言えるのか。
まず彼の生業を考えてみましょう。京都造形芸術大学教授です。基本的な収入はここから入ります。ここへのダメージはゼロです。
また現代アート作品は多少炎上した方が中長期的に見て評価が上がるという側面があるので、今回の炎上もキャリア的にはむしろ(というか、かなり)プラスです。なので、撤去によるダメージもゼロ。それどころか攻撃を吸収してHP増えてるよ! です。
サンチャイルドという作品が気持ち悪いとか不快とか勉強不足とかレベル低いとか爆破しろとかあそこに持っていけとか色々とエゲツない表現でイジっていた人も沢山おられたのですが、まず現代アートは「キレイ」「美しい」を表現するものではないという基本的な枠組みがありまして、ここがそれ以前のアート(印象派とかバロックとかロココとかルネサンス絵画とか)と決定的に違います。
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わたしたち日本人は小学校や中学校で、美術はキレイなものですよなんて習ってきたのですが、それは19世紀までのアートの話。20世紀以降のアートは、言ってみればどれだけ炎上したか、どれだけ見る人をザワザワさせたか、そういうとこで評価が決まってゆくので、アート作品をキレイかどうか、好きかどうかで評価している時点でド素人ということになり、アートワールド業界人としては「ド素人をいっぱいザワザワさせた=注目すべき作品」という評価になってしまう。ここでもヤノベケンジに攻撃を吸収されてHPに変換されてしまっていたのです。。。。ううう
そういう構造が現代アートワールドにはあり、しかもヤノベケンジは既に国公立の主要美術館での展覧会実績が山のようにあって大手のビエンナーレやトリエンナーレにもお座敷がガンガンかかるポジションです。ということは、いくらド素人がサンチャイルドを罵倒しようとも、展覧会やビエンナーレトリエンナーレを企画し発注を出す側の業界人から見たら「お、盛り上がってるなあ」くらいのもんでして、これからもヤノベケンジは展覧会やビエンナーレトリエンナーレに呼ばれ続けるでしょう。
サンチャイルドを「黄色いあれ」とか呼んで喜んでいるような人たちって元々、現代アートのお客さんじゃないですからね。そういう人たちの下品ツイートは現代アート業界のお仕事発注を考える際には一顧だにされません。
木幡浩:-3
今回一番多くを失ったのは福島市長の木幡氏じゃないかと思います。
まず首長として炎上案件の責任は不可避でしょう。ダメージ1。
共産党の要求を呑んだ形になったのも保守派からはいい顔されなさそうですね。ダメージ2。
アート作品を杜撰に扱ったという点で、アートワールドからもちょっとどうなんですかと思われちゃったでしょうね。ダメージ3。
井上リサ:0
ヤノベケンジ批判の急先鋒となった現代アート作家の井上氏。攻め手側の主将です。
サンチャイルド撤去まで持ち込んだということで反反原発運動の女英雄になったかもしれません。多少はツイッターのフォロワーも増えたでしょう。プラス1。
一方で、現代アート業界的には、極論を振りかざし大衆を扇動して大御所を執拗に攻撃したということで、要注意人物になったかもしれません。マイナス1。
とはいえプロフィールを拝見する限りでは作家としての実績はヤノベケンジと比べるとこれはどう喩えたら良いんですかね・・・νガンダムとボールくらいの差が・・・・元々鳴かず飛ばずで上がり目も無い感じの方なので、ゼロがゼロになっただけかもしれません。そもそもCVの書き方も素人丸出しだし、最新の個展が1993年でグループ展が1997年? 完全に終わってますな。
菊地誠:0
東日本大震災発生当時から放射能関連デマを徹底的に批判してきた方です。生業はヤノベケンジ氏と同じく大学教員。
今回も放射能デマカウンターの立場からコンスタントに砲撃と近接航空支援を続けて、サンチャイルド撤去の判断を引き出す運動に貢献されました。
とはいえ、彼のこうした言論活動は平常運転。いつもどおりのやつなので、特に勲章にもならなければ失点にもならないと思います。なので得失点差ゼロ。
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木幡市長のギブアップ宣言の後もこんな感じで自陣営以外が福島に関わるなら覚悟しとけ的にエア威嚇を続ける菊池氏。平常運転。これからは菊池氏と井上リサ氏に事前に根回ししとかないと福島県でアーティストは活動しづらいね。どうするChim↑↓Pom!?

林智裕:+1
「防護服を着た子ども像「サン・チャイルド」は、何故、福島で炎上したのか」というウェブ記事を書いて守備側に大ダメージを与えた殊勲者のフリーライターさんです。記事がいっぱい読まれて知名度も上がったはずなので、攻撃側の武将では一番お得だったのではないかと思います。プラス1。
(番外)表現の自由
今回、表現の自由の抑圧ではないかという批判が、攻撃側に対して寄せられているようなのですが、私はそこは問題無いと思っています。無名作家の初個展を中止に追い込んで世の中から抹殺した、とかだったらいけませんけどね。
サンチャイルドは他の場所でも何度も展示されてきた作品ですし、作品そのものが破壊破棄されたわけではないですから。加えて言えば、ツイッターで炎上させられたことで逆にサンチャイルドの画像が大量にインターネットにアップされてしまった。むしろ、より多くの人の目に止まるようになったのですから、現代アート作品としては願ったり叶ったり。ありがとう炎上、ありがとう井上リサ。いつか井上リサさんの作品も炎上出来ると良いですね。
似たような案件で思い出したのが、かつて三重県志摩市の公認萌えキャラだった碧志摩メグです。これも自称「現代アート作家」の女性たち(しかも匿名で顔にモザイクってどんだけチキンなの)のネット上の攻撃に晒されて、自主的に公認のステータスを返上する形になりました。
が、結果としては碧志摩メグの知名度は上がり、炎上から4年近く経った現在も運用は続いています。ツイッターフォロワーは15000強。ネット時代には、表現の自由というのはなかなか潰せないものですね。良きことです。
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ちなみに現在も福島県立美術館では常設展としてヤノベケンジ作「サンチャイルド」(ふくしま自然エネルギー基金所有)が展示されておりますので、大きいやつが撤去されて寂しくなった人は、小さいやつに会いに行きましょう。
パブリックアートじゃないから問題無いですよね菊池先生?。