ここは敢えて原発を忘れていこう

 上関原子力発電所の建設反対運動が、いよいよ先鋭化してきたようです。裁判所の仮処分命令も無視となると、もはややっていることのレベルがグリーンピース・ジャパンと同じ。祝島はホクレアの日本来航時に「神舞」を披露してくださるなど、私のこれまでの活動ともそれなりに接点があるのですが、ここまで行ってしまっては、全く支持出来ません。
 
 上関町はこれからどうなるのでしょうか? おそらく、原子力発電所は建設されるでしょう。時間はまだかかりそうですが。そして、原子力発電所が出来れば、外部から入り込んでいる活動家の皆さんは、どこか別の土地に新たな闘争を求めて移動してしまうでしょう。上関町の地域コミュニティは、そこからゆっくりと回復していくのでしょう。

 では、私たちは何をすれば良いのでしょうか?

 反対運動の活動家が流す宣伝を片っ端からリツイートしたりブログで紹介する行為は、対立に油を注ぐだけです。同じように外部の活動家が(規模は違えど)流れ込んできてネット上に誇張された情報やデマを撒き散らされた稲城での経験から想像しても、現在の上関町町民の方々の心労は大変なものだと思います。ですから、まずは無責任なリツイートやリンクは控え、賛成派にしろ反対派にしろ、地元の方の言葉だけを選んで紹介し、あるいは耳を傾けていくことから始めるべきです。

 そして私が提案したいのは、原発とは関係無く、上関町やその周辺の市町村のことを学び、一緒に何か建設的なことが出来ないか考えていくことです。私の友人の松村文彦さんは、原発紛争とは距離を置きつつ(上関町と同じ熊毛郡の)田布施町のまちづくりに今も真剣に取り組んでいますが、彼のような人たちの話をまずは聞かせていただき、そして上関町とその周辺の地域活性化をじっくりとサポートしていく。遠回りに見えても、実はこれが一番良い方法なのではないかと思います。

 例えば松村さんは去年、私のゼミで「田布施町に里山・里海条例をつくりたい」という話をしてくださいました。都会っこの学生たちには一蹴されたアイデアでしたが、きちんと煮詰めていけば、決して無意味な政策ではないはずです(ちなみに近々うちのゼミ生が田布施に過疎化の現状を見学に行く予定にもなっています)。

 もはや上関の反原発闘争はカタギの人間が責任を持って関われるような状態ではなくなっていますし、外部の人間が安易に関わることが事態を悪化させるフェイズにも入ってしまっていると思います。

 だから、原発の件は避けて通りましょう。

 もっと別の話をしようじゃないか。

 里山・里海条例良いじゃないですか。その話、もっともっとじっくりと、そして熱く語りましょうよ。他にも、皆が楽しくなれる話、未来を創る話をしていきましょう。ルールは一つだけで良いです。

「原発の話を出したら即退場」

 松村さんは私のゼミで、とにかく農業ではもう食っていけないし、過疎化もヤバい、地域の公共交通も壊滅状態・・・・という、本当に洒落にならない現実を語ってくださいました。田布施の隣の上関町も似たようなものでしょう。原発があろうが無かろうが、そういう土地に住む同胞たちの存在を知ったならばサポートしていくのが当然だし、原発の話を出して無限ループの議論で時間を浪費するよか、原発の話を禁止して未来を語る方が良い。反原発ではなく、反・原発談義ですね。

 闘いを求める人、何かに怒りたい人はどうぞツイッターにログインして#kaminosekiで思う存分やってくださいよと。それとは別に、原発談義は出入り禁止で未来を語る場、創りませんか? 渦巻く怒りのエネルギーにうんざりしている人たちが集まってくるはずですよ。