地域に現代アートを持ち込む作法

日本全国で現代アートを地域活性化のネタとして使ってきたのが、この15年ほどだったと思う。

それでどれだけ現代アートが根を下ろし、花を咲かせ、実をつけ、そして次の世代を育む土壌が出来たのか。

あの有名な越後妻有はどうだろう。

何度か訪ねたことがある。

達成度で言えばまあまあ、かなりのものだ。

特に凄いのは例のあそこ。

何が凄いって、入り口の前に門前町が出来ている。

大したもんだ。

だが、地域の中に温度差、受容度の濃淡があるのも確かだ。

トンネルは凄い。何しろ凄い集客力があり、キャッシュフローを生み出しているからだ。門前町も含めて。

そうではないところも、まあ地域の中に存在することを許されているところまでは行っている。

これは大したものなのだ。本当に。

地域に現代アートを持ち込むときに何が大事なのか。

アート? それは最後。最後の最後。

何はなくとも信頼。地域の住民の方々、キーパーソン。 そういった方々が一番えらいのだ地域では。キュレーターもアーティストもコーディネーターもお邪魔させていただく立場なのを忘れてはいけない。コンセプトだの未来図なんだの以前に「人として最低限信用してもらっている」ところまでいくのが初手。そこから更に信頼を積み重ねていって、まあそこまで言うなら手伝ってやらんでもないわ、と言ってもらえるようになって、やっと本当のスタート地点だ。

アートだって人間の営みだ。人と人。これに尽きる。

アーティストに対してもそうだ。

アーティストへのリスペクトを欠かさないのは当たり前として、ある程度以上キャリアがあってあちこちからオファーがあるような方々に、今度こういうことをやりたいんですが、ご協力いただけないでしょうか、日程はこれを予定しています、いかがでしょう。ありがとうございます。日程空けておいていただけるとありがたいです。そうやって、やはり平身低頭で営業して回る。時間単価が普通に10万円を超えるような人たちが、「◯◯町をアートでなんとか盛り上げたいんです」という意気に感じて、普通の10分の1の単価で内諾してくれたりする。

こちらも、人と人だ。

人と人。

信頼関係を作る。誠実に、未来を語る。次世代を育てましょう。これまでチャンスを得られなかった人たちにチャンスを作りましょう。良いですね。やりましょう。協力しますよ。

本当に真剣に、新しい土地に現代アートのビオトープを作るには、人と人の信頼関係をどれだけ張り巡らせるか。人を裏切らない仕事をするか。最後まで仁義を通すか。それだけだ。

それを欠いた「地域アート」が成功するというのであれば、是非見てみたい。