ロシアを非難する言説に対して「そんなことを言っているとロシア人が傷つくから止めろ」と諌めて回る善意の日本人(らしきアカウント)は若干だが存在している。
だが、そうした対抗言説の主体が、その一方でロシア政府に対する対抗言説を何らかの理由で発しないのであれば、まさにフーコーの言う生権力によってクレムリンの出張所化している状態と解釈しうる。
プーチンの「戦いの原因を作っているのは西側だ」という論法が極めて巧妙なやり方で多くの人間の行動パターンに埋め込まれ、無意識のうちにプーチンの代弁者にされているわけだ。
国民国家という制度でプーチンに囲い込まれた上で、ムラ社会の忖度システムを使ってロシア批判を減殺する尖兵にされてしまう。プーチンという大悪魔のありようとしてデビルマンのジンメンを思い出さずにいられない。
【警告】ジンメンで検索するとまじ怖いの出てくるから止めたほうが良いぞ
また、宇露戦争はどう考えてもglobal issueだが、上記のような善意の親露派の方々が「宇露戦争はロシアとウクライナの問題なんだから日本人は口を出すな」論法を使うのは「DVは夫婦の問題だから外部の人間は口を出さない方が良い」という考え方に似ている。
これに「特殊軍事作戦をしてるのはプーチンだから一般のロシア人は悪くないんだ」論法が加わるので、親露派の世界観は「宇露戦争はウクライナとプーチンの間の問題」ということになる。
プーチン=ロシアの家父長で意思決定権を持っているのはパパ・プーチンだけなんだという設定である。おそらく。
この世界観と設定の組み合わせで、宇露戦争のロシア側の責任者はパパ・プーチンただ一人ということになり、なおかつdomestic issueだからロシア人以外は発言するなということにもなる。
どこまでもロシア人Zにとって都合が良い。
それを善意の日本人が勝手に代弁してしまうシステムが作動している状況は社会学的に実に興味深い。
ムラ社会のコミュニケーションでglobal issueを扱うと、こうなるという見本のようなものだ。