印税収入が無くても書き続けられる人々が、次の時代の主役になるのではないかという予想

2018年の書籍の売り上げランキングを見ていたんだが、小説部門だと10位が田中芳樹の(あのどうしようもない駄作となった)アルスラーン戦記最終巻で、推定売上部数は109,161。

ビジネス書だと10位が(聞いたこともない)『 サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門』という本で、推定売上部数103,691。

つまり、小説もビジネス書も10万部を超えると年間ランキングトップ10入り出来てしまうくらい、本が売れていない。

おそらくかなりのロングテール構造ではあるのだろうけれども、そのモンスターヘッド部分でも年間10万部ということは、印税が(1冊1600円なら)1600万円くらい。

笑ってしまうような数字だ。

2018年の書籍出版点数が71611点。まあ年間で7万ちょっと出るとして、その頂点に君臨する売り上げランキング10位で印税1600万円である。

(しかもアルスラーン戦記最終巻なんて老害本が知名度と昔からのファンの惰性買いで市場を確保している。一応、最終巻の手前までは全部買った元ファンなのだ私は)

本は儲からない。

YES。その通りである。

だが、ここで別の視点を導入してみたい。

何かを書く人は、それでも増え続けている。

ウェブ小説サイトにアカウントがある人間は、うろ覚えだが100万人を越えていたのではないか。なにせ「小説家になろう」だけでアカウント数は公称80万以上だ。重複も多いがカクヨムやnoteやエブリスタも足せば確実に100万は超えるだろう。

これは凄いことだ。

何が凄いって、カネにならなくても小説やエッセイを書ける人が100万人。書き続けられる人はグッと減るだろうが、それでも1万や2万よりは多いだろう。

カネにならなくても書き続けられる彼・彼女らはみじめなのか? かわいそうなのか?

逆だ。

書いたものがカネにならなくても書き続けられる体制を構築出来ている彼・彼女らは凄いのだ。セルフマネジメント能力の点でもモチベーションの点でも。書き続けることが出来ているという時点で、彼・彼女らは選ばれた人間なのだ。

本が売れなくなった。それは、一つには、無料で読める(あるいは視聴出来る)面白いコンテンツが溢れているからだ。

これは、新しい時代に選ばれた人々によって、古い時代の人々が駆逐されている状況なのだ。時代の流れだ。抗うことは出来ない。

新しい時代の「書くこと・読むこと」のありようはまだはっきりとは見えないが、新しい秩序が訪れることは間違いない。より多様で複合的な収入モデルを構築出来た書き手が生き残る世界だ。

だから、nWoのTシャツを買っておけば良かったとちょっとだけ悔やんでいる。