『後宮小説』とわたし

日本ファンタジーノベル大賞に応募する作品の原稿はもう誤字脱字の修正フェイズに入っていて、10回目くらいの読み直しを今日もしていました。こういうのは何度読んでも入力ミスが出てくるので、あとは根気ですね。
 
昨日は街でちょっと時間が余ったので、書店で日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作をチェックしてみました。第1回の『後宮小説』は学生の時に読みましたが、それ以外は本当に読んだことがなかったので、レベル感を知るために。敢えて具体的に第何回の受賞作かは書きませんが
 
「こんな近い位置で同じ語を使っちゃうのか(同じ意味を別の語彙で表現出来るけど、やってないんだね)」
「冒頭のシチュエーション説明をこんなわざとらしい台詞で処理しちゃって良いんだ」
 
などなど、結構新鮮な驚きがありました。
 
『後宮小説』同等でないと勝てないのかなと思っていたので。そこまででも無い感じ。
 
受賞作の名誉のために書き添えておきますと、『後宮小説』の文章のレベルを10点としたときに、異世界転生系「なろう小説」の平均的な文章レベルは、出版されてシリーズ化されているもので1点で(店頭で何冊かランダムサンプリングで読んでみて頭がぐらぐらするレベル。ただしちゃんと売れてるんだから顧客の求めるクオリティレベルには達しているのでそれで問題無いのです)、上記受賞作は7点くらいだと思います。ラノベという特殊世界を除外したとしてもプロ作家として充分な筆力であることは確かです。
 
『後宮小説』が凄すぎたんだな、多分。応募当時の酒見賢一は25歳。私が『後宮小説』を読んだのは1993年だから22歳。実は今回の応募作『竜の居ない国』の中に、当時の私自身の気持ちを、アウォードへのオマージュとして主人公に語らせています。
 
「こんなものを自分と同じような年齢の男が書いたのか、世の中には凄い男がいるものだ、という以外の感想が無かった。その時は多少落ち込みもしたが、ほどなくそうした感情は忘れた。」(『竜の居ない国』第9章:宮廷詩人より)
 
修士課程の指導教官だった三井徹先生の前任校が愛知大学で、酒見賢一の指導教員とも知り合いだったそうで、どこかで三井先生が「酒見賢一というのは凄い勉強家だって聞きました」とおっしゃっていた記憶もあります。
 
話を戻しまして、文章の巧拙については「少なくともそこで負けることは無いだろうな」とこっそり思った次第です。負けるとしたらこれでしょう。
 
「ジャンル違いと思われた」
 
その時はしゃあない。