【目指せファンタジーノベル大賞のその先を】3万人と3万人が本気で戦ってほとんど死傷者が出ない会戦を書いた

『竜の居ない国』の前日譚。3章まで書き終わりました。

3章は『竜の居ない国』の20年前に連合王国の東の国境付近で起こった隣国との会戦の顛末を語る章です。

前日譚は軍隊の兵站のお話なので、実際の会戦はどんなものなのかを早い段階で描いておく必要があり、一つの章まるごとを歴史叙述にしてしまいました。

舞台となる地方は国境の川と、丘陵地帯に挟まれた平野。イメージとしてはライン川のストラスブール~コルマール~ミュールーズ辺りです。

アルザスです。まさにこんなような地形を想定しています。

二つの民族が混じり合って住んでいる地域に隣国の軍隊が侵入して来て、『竜の居ない国』でも終盤に重要な役割を担う歩兵連隊「チェレク連隊」が出動する。もちろん出動するのは1個連隊だけではなく、歩兵15個連隊、砲兵3個大隊、騎兵3個大隊という「軍団」ですが。

この地方の地勢や産業や交通網の設定、隣国の政治状況の設定、敵将の置かれた政治的立場、武器の性能の設定(例えば銃の有効射程や大砲の発射間隔、どれくらい撃ったら砲身や銃身が過熱するか、まで)、戦場の地形(斜度や標高まで計算して設定した)。これだけ細かく考えて、更に地図上に兵科記号を書いて各部隊の機動も考える。

この将軍はどこまでリスクテイクするだろうか、そのリスクテイクは何を目的としたものだろうか。何故、会戦の場所はここになるのだろうか。それぞれの部隊の行動は合理的だろうか。どこにどれだけの物資を集積して、どこから運ぶだろうか。それが可能な人手はあるだろうか。これを考えに考えて、グーグルアースで色々な土地の地形も見たし、近所の丘を自分で実際に歩いて、ここを鎧を着て長槍を持った兵士が駆け上がったらどれくらいでオールアウトするだろうかと考えたりもしました。

そして、とにかく馬鹿は一人も出さないようにした。将軍たちはミスを犯さないようにした。

そうすると、またしてもなんですが、派手な戦闘が起こらないで終わってしまった。片方が「負けなければ勝ちに等しい」という状況を会戦以前に作ってしまって、後はひたすら守りを固めて時間稼ぎをする。そしてタイムアップで判定勝ち。

文字数

前作と同じ。

それで7000字。

そんなの面白いんかと思うのですが、これが案外、書いていて面白かったです。3万人と3万人が会戦して、死傷者はおそらく100人も出ていない。お互いやる気が無いわけではなく、国際政治の中でのこの戦いの意味合いを双方とも深く理解して、それぞれがノーミスで対戦したら、こうなって、こうなって、こうなって、こう防いで、あーやっぱこれは時間切れ引き分けしか無いねと。

今まで色々なファンタジー小説を読んできて、会戦シーンが「そんな馬鹿な」「そんな間抜けが何故その地位にいる」というものばかりだったので、自分が読みたいものを書いたら、こうなってしまいました。

4章ではいよいよライバルキャラの登場です。