スイスデザイン展を見た

今日は初台のオペラシティ内にあるアートギャラリーで「スイスデザイン展」を見てきました。

スイス製品の見本市的な構成でしたが、指向性が明確なだけに非常に勉強になりましたし、楽しめました。

内容を大きく分けるとグラフィックデザインとプロダクトデザインで、更にそれらを総合して明示的ではないですがスイスという国のブランドデザインも見える人には見えるような展示会になっています。

まずグラフィックデザインについて概観しますと、20世紀初頭、まだ写真がポスターに使われていない時代のイラストによるポスターがあり、次に両大戦間に現れた最初期の写真ポスターが出てきます。文字はレタリングで、イラストも写真もまあよくある奴ですよ。イギリスやフランス、アメリカでそれぞれ発達したポスターデザインと並べて、飛び抜けているわけではないですがそれなりにレベルは高い。

見どころは1950年代以降です。マックス・ビル、マックス・フーバーの両巨匠を始めとする、タイプフェイスいじりの極限を追求したような洗練されたグラフィックデザインの雨あられ。2色か3色の色、シンプルな図形、そして文字。それだけでここまでやるかと。見てるだけで心拍上がりましたからね本当に。すごい。ひたすら凄いです。さすがヘルベティカの国。

一方、プロダクトデザインではスウォッチ、アーミーナイフ、フライターグ、バリーあたりが大きく取り上げられていました。中でも面白かったのはヴィクトリノックスの歴代モデルや特殊モデル、試作品を並べたコーナー。わけわからん試作品がいっぱいです(笑) 例えば外科用メス付きのアーミーナイフとか、瀉血用ナイフ。何考えてそんなもん作ったんよ。アーミーナイフで手術されたくないよ。消毒したのかよ。バリーのコーナーではヒールのサンプルがいっぱい並んでて、一緒に行った若い女子たちはきゃー素敵と盛り上がってましたが、私は「これで踏まれたら痛いだろうなあ」としか。なおフライターグは同業他社ですが、アイデアはともかくその値段とそのデザインは無いだろうと一貫して批判的な私です。

最後に全体を俯瞰しての感想ですが、スイスがスイスらしいデザインを確立したのって案外新しくて1950年代だよなということが言えると思います。ヘルヴェティカが出来たのが1957年。タイプフェイスいじりの四十八手みたいなのが開発されていったのもここから20年くらいの間。ちなみにプロダクトデザインでは実はスイスらしさって1983年に出来たと思うんですよね。それまでは刃物にしても機械式時計にしても木工品にしても、スイスらしさってそんなに意識されてなかったように感じるのです。アメリカみたいなゴージャスでデラックスでグラマラスなスタイリングをしない、そして何色かの原色を効果的に使いつつ機能部品をちょっとユーモラスちょっとキュートに見せるというやり方は、ドイツや北欧でもやっているわけですから。

しかしそれだけではちょっと厳しくなってきた。特にあの目障りな日本の安物メーカーどもがショバ荒らしヒドイだろということで、出てきたのが逆転の発想で、スイスという国を徹底的に強調するブランド戦略なんじゃないでしょうか。1983年そうですスウォッチ創業の年。。

考えてみてください。スイス国旗ほどにあらゆる商品にくっつけて売られてる国旗って無いでしょう。あの国旗デザインそのものがブランド化されている。それだけでは周辺諸国との差異化が難しい自国のプロダクトデザインに国旗を付けて売るというやり方で、スイスはブレイクスルーを果たしたんでしょうねえ。たった32年前に。

もちろん我が日本国はスイスより遥かに古く、スイスよりも強烈な国際的影響力を持つプロダクトデザインやグラフィックデザインの歴史を持っていますが、クールジャパンという標語は今現在、SWISS MADEほどの神通力を持っているんでしょうか?