NovelJam2019′ を終えて【KOSMOS】

NovelJam2019’が終わりました。

チームメイトだった森きいこさん、こばじさん、澤俊之さんも期待を超えるアウトプットを出してくださって、とにかく私が作りたかったもの、「王道のキャラクター文芸」を作ることが出来ました。

2日目はスイス傭兵みたいな服で現れた森さん、なんと私の半分のお歳というこばじさん。日本には素晴らしい才能がゴロゴロおります。

森さんの「天籟日記

澤さんの「We’re Men’s Dream

どちらも、子どもたち(私から見れば)、若者たちが変わる瞬間を見事に小説の形で描いています。

器用貧乏な人生の私ですが、「どの仕事が一番好きだった?」という質問にはいつも

「そりゃあ先生の仕事だよ」

と答えます。その醍醐味はやはり、人が変わる瞬間に立ち会えるという点にあります。人が前に進む瞬間。前に踏み出す瞬間。

その瞬間を、森さんは筋肉バカ青年と美少年とお姫様と日英ハーフ少女という、いかにもドタバタコメディになりそうなキャラクター群を使って、驚くほど静謐なクライマックスとして描きました。

モチーフになったのは、イェーツの”Aedh Wishes for the Cloths of Heaven”という詩です。

Had I the heavens’ embroidered cloths,
Enwrought with golden and silver light,
The blue and the dim and the dark cloths
Of night and light and the half light,
I would spread the cloths under your feet:
But I, being poor, have only my dreams;
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly because you tread on my dreams.

森さんは明言はしていませんが、この短い詩の内容をかなり色々な形で作中で展開していると思います。是非、お買い求めになって、ご確認ください。

一方の澤さんは、一度は音楽を諦めて実家でくすぶっていた女性が、再び音楽の力を思い出す一瞬を。こちらはまさに王道、京アニのクライマックスみたいな演出で。

そしてもちろん、27時間でこんな凄い絵をゼロから描き起こしてくださったスーパー絵師、こばじさん。

理想どおりのチームラインナップで、理想の作品を二つ。

幸福な2日間でした。

さて、その理想のチームですが、運営面では私は基本を厳守で、変わったことは一切していません。

  • 嘘をつかない
  • 隠し事をしない
  • プロジェクトに深くコミットしてくれる人だけを揃える
  • 情報の整理整頓を徹底する

基本はこれだけです。

例えば、デザイナーのこばじさんには10/26の時点でこのようなデザイン案を送っています。

これも情報の整理整頓の手段。

あとはChatworkを徹底活用して、情報のフローとストックを分けたり、もちろんプロジェクトマネジメント文書はPMBOKベースのものを事前に作成して共有してあったり。

それと、今回はリモートの作業の割合が多かったのですが、これについては最初からリモートでチームビルディングを進めていったので、リモートワーク主体のチームで一番大事なこと、すなわち

  • インターネットの向こうにいる人と信頼関係を作れる人

これは自然に組み込まれていました。

制作作業については、プレゼンでもお話ししたのですが、基本的に私は何でもどんどんやりたいことはやってね、というスタンスです。

もちろん細かい部分では「これ、いらないかも」という指摘は幾つも行いましたが、お話の流れはほぼ一発OKを出したプロットで書いてもらってました。

他のチームの方々の話を聞くと、編集者と著者の間では、小説の中身についてかなりシビアな戦いがどこでもあったようなのですが、チームKOSMOSでは無かったですね。

何故そういうやり方になったのか。これは種明かしをすれば簡単で、「やりたいことはどんどんやれ」からの刈り込みで成型しようと思っていたんですよ。

ところが森さんは自分で刈り込みまでやってしまったし、澤さんは駆け込みで完成だったので余計なものを書く時間が無かった。

それ以前の物語の骨格部分は事前に十分に話し合いがされていたので、ここが物語のコアですよね、という共通理解は既に出来ていましたしね。王道。青春。グレンラガン。(こばじさんが合流してキルラキルにも発展したらしい)。

あとは、ChatworkでもTwitterでも自由に何でも書ける雰囲気を作って、メンバーがNovelJamという時間をめいっぱい楽しんで過ごせるようにする。懇親会で我々のChatworkのフリーディスカッションスレッドを見たNovelJam運営の方が「仲が良いんですねえ」と大笑いしてました。

良いと思ったものはどんどん褒める。自慢する。

そんなところでしょうか。

NovelJamのマネジメント、色々なやり方があると思います。私はこういう、教科書通りのマネジメント+本番での雰囲気作りというスタイルが好きだし、得意です。でも、他のやり方もあって良い。

来年以降の参考になれば幸いです。