奈良県が国民文化祭のロゴを水野学(くまモンをデザインしたスターデザイナー)に540万で随意契約で発注したら、高すぎると訴えられた。
30万円で出来るだろうと。
さて、どうかな。確かに30万円でも何かは出来る。それどころか10万円でも出来る。だがしかし、私個人の僅かな経験から言うと、安いところはやはりそれなりの出来な気がします。
こういうデザインのプロセスで一番大事なのは、コンセプトの共有だと思っています。発注側と制作側が、何を目指しているのかの共通理解を構築すること。
その際に必要になるのは
・発注側がブランドのコンセプトを可能な限り精密かつ矛盾無く言語化すること。
・制作側が成果物の設計を可能な限り精密かつ矛盾無く言語化すること。
・お互いに何を言っているのか理解出来ること。
だから、発注側が曖昧なことしか言えなかったり、制作側が曖昧なトークしか出来なかったりすると、共通理解が成立しない。仮に成立したとしてもレベルが低い共通理解になる。
場合によっては、どちらか(賢い方)が、相手はわかっていないのを前提として、というか、この相手にわからせる手間は無駄と割りきってしまって、黙って言うとおりにしてくれ、もう余計なことは考えなくて良いという形で決着を図る。
そういう、そもそも発注側が何を作りたいのかきちんと言語化出来ない時であっても、よりレベルの高い解を出せるのは、多分、水野学のような実力者なんだろう。
であればこの差額510万円は高いか否か。
少なくとも、出てきた成果物の品質で考えたら、私は高くないと思う。30万円でこのレベルの成果物を手にできるとしたら、発注側に水野学レベルでグラフィックデザインの知識とセンスがあり、デザイナーを手足のようにコントロールして、ここまで寄せられる凄い人材が居た場合だけだ。そんな人材は居ないのが当たり前だ。
後は、これを奈良県がどれだけ生かして、投資を回収出来るか。そこは真剣にやらないとダメね。
国民文化祭が終わったら奈良県内の商工業者に申請制で自由に使わせれば更に良い。1回限り使い捨てにするにはもったいないレベル。