千葉県少年少女オーケストラのサントリーホール公演

人呼んで世界一上手いジュニアオケ、千葉県少年少女オーケストラのサントリーホール公演に行って来ました。

指揮者は井上道義さん。
ソリストには小曽根真さん。

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曲目はショスタコーヴィチの交響曲1番、モーツァルトのピアノ協奏曲9番、伊福部昭の「管弦楽のための日本組曲より」から抜粋。

いきなり菊紋のバッジつけたおにいさんたちがいっぱい立ってて何かと思ったら、何と秋篠宮家の内親王がお二人で来ておられました。さすがの人気でしたね。「あの子たち、ああいう服(地味目のスーツ)かイブニングドレスしか着られないのか・・・ほんと大変だよな」と言ったのが誰かは秘密。

さてさて、千葉県少年少女オーケストラ。

ホントに世界一上手いのか確かめてやろうじゃないかと思って見に行きました。

たぶんホントです。

目ぇつぶって聞いてたらプロと全く聞き分けつかんですよ。プロ並みというアマオケへの褒め言葉は頻出ですが、こいつらだけはガチだった。これまで幾多のマエストロをぶったまげさせてきた伝説は、たぶんホント。

音色、音量、リズム感、表現力とも笑っちゃうくらいプロレベルです。金管の立ち上がりなんか普通、どんな出来の良いステージでもアマオケだったら2回くらい外すじゃないですか。あれ、無いからね。ホルンもトロンボーンも盤石の安定感です。怖いです。

で、よく見るとどう見ても小学生なお嬢さんたちがバイオリン弾いてたりするんだ。なんだこれは魔法か。どういう魔法だ。魔女の仕業か! 魔女こわい。(実話入ってます)

もちろん、本物のプロは、このレベルの演奏を一週間のリハーサルでやれちゃうからこそプロなのであり、1年かけてこれを作ってくる千葉県少年少女オーケストラは、投入工数に対するアウトプットで言えば明らかにアマチュアです。証言では、全体練習で1小節に2時間かけることもあるとか・・・。

でも大したもんですわ。ほんまに。

それぞれの曲について簡単に感想を。

ショスタコーヴィチ:小学生にこれ弾かすだけでも過激なのに、単に間違えないとか合っているとかを遥かに越えた怒涛の出音と表現力です。凄すぎて完全に正体不明です。

モーツァルト:客席から軽やかに登場した小曽根真の軽やかなソロがカデンツァ部分でどんどん暴走していくのが最高でした。1楽章では怒涛のブルーノートやアウトサイドスケールを駆使してみせ、2楽章では現代音楽風に和声学の禁則を全部吹っ飛ばす平行五度やらなんやらをガシガシと打ち込み、3楽章はモーツァルト聞いているはずがカデンツァに入ったらチャイコフスキーかドビュッシーかという後期ロマン派な奏法ですよ。何で小曽根真かって、こういうことでしたか。いやもう最高。オケはオケで、小曽根真がどれだけ暴れようがシレッと教科書通りの古典派のコンパクトな演奏を優雅にキープしてみせる。さっきまでショスタコーヴィチでソ連軍みたいな世界作ってた子たちが。呆れたもんだ。

伊福部昭:日本列島の土着の要素を強く出した組曲なんですが、打楽器と金管の迫力がとにかく素晴らしかった。リズムのキレが凄いのよ。子供なのに。弦も打楽器と管の全開出力に全く負けていない演奏。ショスタコーヴィチやってモーツァルトやって最後に伊福部昭なんて、普通スベると思うじゃないですか。それが今日一番の出来だったと言って良いレベルだからね。まあほんとおそろしいオケです。

で、今日誘ってくれたのは、このオケをテーマに卒論を書いた教え子なんです。ここまで非常識なジュニアオケを経験した人たちが、その後、その非常識な経験をどう生かしているのかという論文。結論としては、音楽を続けるにせよ別の道に進むにせよ、オケの経験そのものも、そこで得た繋がりも、大きな財産になっているというものでした。

ただ、今日オケの演奏を見て聞いてやっぱり思った。

なんだかんだでこの子たち、10代のうちに世界一の何かになってしまったわけで、この時間を超える何かにこの先出会えるかどうか、これは結構なハードルだろうなあと。

仮にプロになったとして、もっと上手い人たちの中で音楽をやりながら生きていくとしても、10代限定の、この濃密な時間を超える経験になるかどうか。毎年毎年自分が上手くなっていって、最後20歳になったら強制引退という、限られた時間の中で、トッププロをもうならせる驚愕の音楽を作っていくという、ここにしか無い魔法の10年間ですからね。