ガンダムエースのサイレント削除事件、公式の説明はあったものの・・・

火に油を注ぐ感じかも

「ガンダムエースの編集者が市ノ瀬さんの発言をちょっと脚色しちゃったのが校了に回ったので電書版だけ差し替えた」という公式アナウンス。

平素より『機動戦士ガンダム 水星の魔女』を応援していただき、誠にありがとうございます。

この度、月刊ガンダムエース2023年9月号に掲載されているインタビュー記事につきまして、紙の雑誌と電子版において一部記述が異なったことで、作品を応援してくださる皆様に混乱を招いてしまい、誠に申し訳ございません。

当該記事において、ガンダムエース編集者の憶測による文面が存在し、校正時に修正依頼を行ったにも関わらず、該当箇所の修正が反映されないまま責了となり、7月26日に発売されることとなってしまいました。

作品側としては、本編をご覧いただいた皆様一人一人の捉え方、解釈にお任せし、作品をお楽しみいただきたいと考えておりますので、ガンダムエース編集部とも協議の上、修正可能な電子版の記述は、本来の依頼通りに修正し、現在は配信しております。

この度は、作品を応援してくださる皆様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしてしまったことを、重ねて心よりお詫び申し上げます。

引き続き応援の程、よろしくお願いいたします。

2023年7月30日

バンダイナムコフィルムワークス

しかし国際炎上収まらず

英語のレスが山のように

まるで「ガンダムでは同性婚を明示はしない方針です」と宣言したも同然なので……なんてマズい対応なんだ……一言相談してくれていれば……いや、私がまとめといた記事読んだら、それはダメだってわかったはずじゃないですか……

一番良いのは最初から電書版差し替えなんかしないで流すことだったんですけどね。

公式サイト上ではなく他社の雑誌での声優さんの発言ってことで、放っておけば八方丸く収まった。

「バンダイナムコやサンライズ公式じゃなくて他社(カドカワ)で声優さんが話したことなんで、あれは声優さんの解釈」というスタンスで見て見ぬふりをしていた場合と、今回の「サイレント削除」「同性婚は明言しないのが公式方針」の2連発では、ガンダムと水星の魔女のブランド価値は億の差が出ていた。もちろん見て見ぬふりルートの方がビジネスとして明らかに正解だった(より多くの人が幸せになり、お金も回る。良いことばかりだった)。

ところがマイノリティ表象に直接関わる箇所のサイレント差し替えを実行したことでどう転んでも炎上、ファンも傷つくという最悪の悪夢に。

これは私の推測にすぎませんが、座談会の現場もそれを取材していた編集者も、そこに居た全員がスレミオは結婚しているという共通認識を持っていたんだと思います。だからインタビューを構成した編集者は自然にそれを文字化して、編集部で責任校了まで行ってしまった。全員それに違和感を持たなかったわけです。

どの段階であるのかはともかく、バンダイナムコの担当者チェックも通ってしまった。まあ、誰も彼もスレミオは結婚していると思い込んでいるわけですよ。あれでそう思わない方がおかしいレベルの描写だったので。

ところが実は内規でそれの明言はNGというのがたぶんあったんでしょう。内規の解釈のグレーゾーンだったのかもですね。

ツイッターで大盛りあがりになったところで誰かが止せばいいのに内規を入念にチェックして、これは電書だけでも差し替えられないかとか言い出して。バンダイナムコの人なのかカドカワの人なのかはわからないですが。そしてガンダムエース編集部、そこで「それはビジネスとして考えても非常にマズいです。どうか再考を」と止めていれば。

しかし、残念なことに、それがクィアやレインボーの文脈でどんな意味合いを持つのか理解しないまま、実行されてしまった。

そして火力強化されての再びの国際炎上。

ミオリネ社長のおっしゃるように、失敗も糧として進むしかないか。

このぶんだと、これだけでは収まらなさそうな気もします。

こんな匿名はてなもあった

なんらかの理由で出したくなかったのは間違いないが、その理由が「表に出るとまずいセンシティブ案件だったから」とは限らない。

情報を「いつ・どの媒体で・誰が・どのぐらいの確実さで」出す予定だったのか、あるいは出さないつもりなのかは、この一件からだけではわからない。今じゃないよね、かもしれないし、ガンダムエース以外で出したかったのかもしれないし、声優が明言する情報ではないよね、だったかもしれない。

あるいは言葉で説明するのは無粋だ、映像から読み取ってほしい、なのかもしれない。だったら重要スタッフであっても、あるいは重要スタッフだからこそ、「私の解釈では」の部分をぽろりと前提のように明言されてしまっては演出意図が壊れてしまう可能性もあるだろう。

そもそも、実際の発言できっぱり言い切っていたかどうかも不明で、「文章にしてみたら断言しすぎの印象になっちゃった」から「その表現は言い切り過ぎ」と取る方向にしただけかもしれない。

理由は様々考えられて、確定できない。「とある理由で言い切りたくない。ただし理由は言えない(説明すること自体が狙いを損ねる)」としか言えないケースは大いにある。

ギズモードとかポリゴンに「検閲」と書かれてしまう

個人的な見解

私の立場、見解も明記しておきます。

まずガンダムエース電子版サイレント削除、そしてガンダムエースおよび水星の魔女公式による事情説明は悪手を重ねていると考えます。問題は二つで、多くのファンやクィアの心情を結果的に深く傷つけてしまったことと、重要な部分の差し替えを黙って行ったこと。この二つは取り返しのつかない失敗でしょう。

ただし、ガンダムエースも含めて巨大プロジェクトなので、ひとまとめにして断罪は私はしません。

もちろんこれを読んでいるあなたがバンダイナムコや小川監督や大河内さんやガンダムエースを一生許さず憎み続けることを私は妨げません

ただ、私は敢えて罪を憎んで人を憎まず。やっちまったことは取り消せないので、ここから学んで次に活かして欲しいという立場です。

それとですね。日本の伝統的企業におけるダイバシティ推進、チェンジマネジメントというのはめちゃくちゃ難しいんです。超タイヘンです。いくら表向きはダイバシティを表明していたって「女性向け商品企画の会議で何で女性が一人もいないんですか」と指摘しただけで切られるような会社は当たり前に存在します。建前を説明してチェンジマネジメントが出来るんだったら我々コンサルタントは何も苦労しません。

という中で、ともかく水星の魔女をあれだけの作品に仕上げた小林監督、大河内さん、スタッフや声優や音楽などの皆さん、関係各方面、すごい頑張ったと思います。皆さん色々と本意ではないことも飲み込んで仕事をされたはずです。

色々と不幸も産みましたが、いつか再び芽を出して花が咲いて実がなることを信じて、ガンダムキャリバーンを買いたいと思います。