今からでも最終章に間に合う「兵站貴族(後に「アルソウムの双剣4:兵站の王」に改題」ここまでのあらすじまとめ

注:この小説は現在はノベルアップ+で公開されています

エブリスタで連載中の長編戦記小説「兵站貴族」が存外に好評です。

エブリスタの「次に読みたいファンタジー 宮廷・王族・継承」でも入賞してしまいましたし、本棚に追加してくださる方もコンスタントに増えており、自分のFacebookで紹介してくださる方も現れました(九州大学ビジネススクールの松永正樹先生とか)。

ありがとうございます。

この小説が一般的な戦記ものと異なるのは、主人公が補給担当の将校だということです。そして彼の戦場は前線ではなく、後方。だから、彼の所属する部隊の海外派兵が決定した後、彼は前線ではなく、首都へと向かいます。中央官庁との調整や首都の政治情勢、財界の動向などを探るためです。ですから、この物語の中盤ではひたすら、首都での主人公の情報収集が描かれます。作中時間での戦闘は一度も書いていませんし、この小説のラストシーンは戦闘開始より前に設定してあります(もう書き終えてます)。

それが一体全体面白いのか? 書いている私は面白いと思っていたのですが、他の人が面白いと思ってくれるのかは全くわかりませんでした。

こんな架空世界戦記小説って聞いたことが無いですからね。

聞いたことが無いから書いているのですけれども。

ただ、とっつきにくい小説だろうな、少なくともそのようには見えるだろうなとは自覚しています。最初は、読める人だけ読んでくれ、という気分で書いていたのですが、予想以上に面白いと言ってくださる方が増えてきたので、まだ完結前ではありますが、ここまでの「まとめ」を簡単に書いてみようと思います。当然ながらネタバレ成分が多量に含まれております。

 

各章のあらすじ

第1章 出動命令

舞台となるのは近世(16-18世紀)の西ヨーロッパに似た異世界。南大陸で最も富み栄えた国家であるアルソウム連合王国の海外飛び地領土であるラファル島から物語は始まる。

ラファル島は連合王国の北の海上交通の要衝であり、中央海を行き来する膨大な貨物の積替え港として栄えていた。

この島にはアルソウム連合王国の3個歩兵連隊が輪番で駐屯して、島の防衛にあたっている。その3個連隊の中でも最大の戦力を持つチェレク連隊に、船で5日ほど北に行ったところにある同盟国・グディニャ君主国に移動せよとの命令書が届く。

第2章 臨戦態勢

チェレク連隊の兵站担当参謀、シムロン・グウィルには秘密があった。彼は実は連合王国有数の大貴族の跡取り息子であり、本来ならば前線には出てはならない立場の人間なのである。だが、グウィルは連隊の仕事にやりがいを感じており、なかなかそのことを言い出せずにいた。

第3章 オジョルニの戦い

チェレク連隊が前回、会戦に参加したのは10年前のことである。東の隣国、ハミジエ王国の軍隊が連合王国に侵入した際、オジョルニの丘と呼ばれる丘の上に布陣して、ハミジエ軍を迎え撃ち、これを追い返すことに成功した。この戦いは、敵軍を殲滅するための戦いではなく、敵軍に戦いを諦めさせて自国へと追い返すための戦いだった。

第4章 会議は揉める

イグリム港へ連隊を輸送するため、連隊本部では会議が続いていた。しかし情報担当参謀のヴァンカレムはグウィルに反感を持っているようで、なかなか話がまとまらない。また、費用か、時間か、どちらを優先して準備を進めるべきなのかもはっきりしない。ヴァンカレムは時間優先で進めるべきと主張するのだが……?

第5章 首都出張

グウィルとヴァンカレムは連隊の派兵の詳細に関して中央官庁との調整を行うため、首都に出張することになった。2隻の巡洋艦に護衛された商船団に便乗して、二人は南へと向かう。船上でグウィルが出会った商人コロンガは、かつてアルソウム地方の沿岸部で猛威を奮った奴隷狩りで故郷から連れ去られた一家の出身だった。この奴隷狩りを終わらせたのが、グウィルの先祖なのだ。

第6章 星の道

船団は星を頼りに方角を知り、南へと航海を続けている。商人たちや船員たちとの会話を通して、グウィルはそれまで知らなかった国際貿易の世界を知った。大学と軍隊と貴族の世界しか知らなかったグウィルにとって、それは不思議で、魅力的な世界だった。

第7章 首都

王宮の斜向いにある実家に戻ったグウィルは、たまたま侯爵邸に滞在中であった叔父のツァルガと再会する。ツァルガは本来ならば侯爵家を継ぐべき立場にあった人物だが、学者として生きるために、あらゆる策謀を巡らして弟に侯爵家の当主の座を押し付けた、油断ならない人物である。それだけではなく、グウィルの母校であるダナエ大学でも最も厳しいと恐れられる教師であった。だが、グウィルはツァルガとの会話の中から、これから自分が生きるべき道についての重要な示唆を得る。

第8章 折衝

首都ゼルワに到着したグウィルとヴァンカレムは、早速、陸軍庁、海軍庁、財務庁と回り、担当者との折衝を重ねた。主務官庁であるはずの陸軍庁の担当者の反応は曖昧だったが、海軍庁や財務庁では、意外にもすんなり話が進んだ。勢いづくグウィルにヴァンカレムは釘を刺す。連隊は給料分を越える仕事をしてはいけないのだと。その真意とは。

第9章 大使館

グウィルとヴァンカレムはチェレク連隊の持ち込む武器の関税免除の確約を得るべく、グディニャ君主国の大使館へと向かった。しかし大使はチェレク連隊にはほとんど興味を示さない。この派兵はグディニャ君主国政府からの要請によるものではないのかもしれない、という疑念が浮上する。しかし、力づくで税関を押し通るわけにもいかない。そこにはグディニャ君主国とアルソウム連合王国の間で結ばれている関税協定の存在があるからだ。

第10章 商人の王

大使館を通した武器類通関の調整に行き詰まったグウィルとヴァンカレムは、打開策を求めて国務院の外交部門を訪れる。そこで二人は、南大陸最大の豪商・ランザイカ家がチェレク連隊のグディニャ君主国派遣の裏にいるのではないかという話を聞く。だが、ランザイカ家は莫大な富を持っているわりには、知られている情報が極度に少ない、謎の一族である。事態の深層に迫るため、グウィルは首都の社交界への潜入を決意する。

第11章 校友会事務所

侯爵家に届いていた夜会への招待状の差出人から、母校の同窓生を見つけ出すために、グウィルはダナエ大学校友会事務所に向かった。そこでグウィルはシュハムと名乗る油脂類の問屋の経営者と出会う。シュハムによると、ランザイカ家の商売のやり方は情け容赦が無いもので、大きな儲けが期待出来る海軍への納入は、ランザイカ家の息がかかった業者が独占しているのだという。

第12章 夜会

グウィルはロワーク兄弟社という材木商の夜会に、マハラビエ侯爵名代として出席した。ロワーク兄弟社を経営するロワーク・ケルテスは、グディニャの内乱はイグリム港の商業活動にはさほど影響を与えないだろうと予想していた。その理由を尋ねるグウィルに、ロワーク・ケルテスはアルソウム王家の起源の神話を思い出せと言う。

第13章 邂逅

ロワーク兄弟社の夜会には、意外な人物も出席していた。ランザイカ家の持つマランジェ銀行の幹部、ランザイカ・マヌーラである。マヌーラは明らかにグウィルに興味を持っていた。マヌーラの話を聞いたグウィルは、ランザイカ家が短期間に巨大化した仕組みを理解した。その商売はこれまでの豪商たちのように、物を仕入れて売ったり、王侯貴族にカネを貸して金利で稼ぐのではなく、様々な業種の会社に幅広く投資し、その収益で稼ぐというものらしい。

第14章 飛脚

マヌーラとの出会いを好機と捉えたグウィルは、翌朝、いきなりランザイカ家の当主であるランザイカ・トゥマルの邸宅を訪問する。銀行、商社、鉱山など様々な業種を展開するランザイカ家の中枢は、意外にも汗臭い運送業であった。トゥマルは祖業である運送業に深い思い入れを持っているようである。同時に、連合王国の隅々まで張り巡らされた巨大な物流網は、連合王国の政治と経済の情報を収集し、ランザイカ家の中枢へと届ける機能も与えられていた。この情報力こそがランザイカ家の強大な力の源泉なのだ。トゥマルは連合王国の将来の最高幹部であるグウィルに、このランザイカ家の情報網から得られたという、とある推測を伝える。その言葉の意味するところに気づいたグウィルの胸中に、暗雲が広がる。

……とまあ、こんなところまで書いてきました。

あらすじを起こしてみても、やはり面白いですね。自画自賛ですけれども。

15章ではいよいよチェレク連隊が海を渡ります。

16章では巨大な商都・イグリムの裏の顔が明らかになります。

17章では、秘密を知ったグウィルがとある決断をします。

18章が最終章になります。

お楽しみに。

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よろしくお願い申し上げます。

※本作の主人公シムロン・グウィルが準備に奔走したチェレク連隊のグディニャ君主国遠征のその後は、本作の続編「西の天蓋」の冒頭で書く予定です。シムロン・グウィルは前線には出ないポジションの人なので、前線を描くには視点人物を変える必要がありまして。次作の主人公は新任中隊長イェビ=ジェミ・ガイリオルです。3作目は既に脱稿している長編「竜の居ない国」で、もちろんシムロン・グウィルもイェビ=ジェミ・ガイリオルも準主役級で大活躍します。