万葉集と文選の関係、機動戦士ガンダムSEEDと機動戦士ガンダムの関係。

令和という新しい元号の出典とされたは万葉集で、これは知られる限り全て中国の文書に出典を求めてきた日本の元号において、初めて日本の古典を出典とした元号ということになります。
ところがこれに対し、令和の出典となった万葉集の文章は、漢時代の『文選』に似ているので、こちらが本当の出典だとする乱暴な意見が早速出ていました。
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しかし、令和という元号を考案した人が参照した古典が万葉集なのであれば、その万葉集の序文に似たものが更に数百年遡る漢籍である文選に入っていて、両者の参照・被参照関係が強く推測されたとしても、典拠となったのは万葉集と理解すべきと思います。故事来歴を引いているのではなく、新しい言葉を考えた際のモチーフなのですからね。

初の「和風元号」の出典となった「万葉集」の「初春令月、気淑風和」との文言について、複数の漢学者らから、中国の詩文集「文選(もんぜん)」にある「仲春令月、時和気清」の句の影響を受けているとの指摘が出ている。

 万葉集が8世紀末ごろの成立とされるのに対し、中国の美文をまとめた文選は6世紀に成立。7~8世紀の遣隋使(けんずいし)・遣唐使が持ち帰ったとみられ、文章を作る上での最高の模範とされた。「仲春」の句は、1~2世紀の文人政治家の張衡(ちょうこう)の作品。張衡は地震計の作製など科学者の先駆としても知られる。

 万葉集と文選の当該部分は、初春と仲春と時期がやや違うが、「令月」との表現や、陽気の説明の「和」が一致する。

 平安前期ごろまでに成立した日本書紀をはじめとする古典は、中国古典の表現を元にして書かれた部分が多いとされる。元号の出典にする場合、「中国の古典の表現を孫引きすることになる」との指摘が出ていた。だが、元号に詳しい所功・京都産業大名誉教授は「日本人は外国から取り入れたものを活用してきたわけで、単なるまねではなく、自分たちのものとして利用してきた」と評価する。

 中国古典学の渡辺義浩・早稲田大教授は、文選の句について「意味は万葉集と基本的に同じ。文選は日本人が一番読んだ中国古典であり、それを元として万葉集の文ができていると考えるのが普通」と指摘する一方、「東アジアの知識人は皆読んでいた。ギリシャ、ローマの古典を欧州人が自分たちの古典というのと同じで、広い意味では日本の古典だ」と意義づける。

少なくとも、令和という言葉を誰かが生み出そうとしたときに、その人の心の中にあったのは、万葉集の序文が描写した古代日本の春の情景であったと推測すべきでしょう。
仮にその序文の一部が、古代中国の詩の一部を参照していたとしても、一言一句同じものではない以上、その序文が描写したものは、古代中国の詩が描写したものとは異なっているはずです。すなわち、その段階で既に創作が行われているのです。
もっとわかりやすい話に例えると、仮に機動戦士ガンダムSEEDに想を得た書道の作品があったとして、「機動戦士ガンダムSEEDは機動戦士ガンダムに遡るのだから、この書の出典は機動戦士ガンダムだ」という主張が正当かどうか、ということ。
あれ? 難しくなった?