感じの悪い社会学インターネットを言祝ぐ

 

外国はどうなのか存じませんが、日本の社会学系ウェブって、昔から雰囲気が悪いところでした。初心者や入門者を見かけたら威嚇してマウンティングするのが基本で、リアルで仕事を回し合う仲間でチーム(平坦なアクセントで読んでください。20世紀の終わり頃に渋谷区にいたストリートギャングの一種です)みたいなのを作って、ネットのあちこちに出かけては喧嘩をしかける。

社会学と言っても社会学部出身の人たちだけではなく、文学部系の人(私もです。文学研究科で社会学部の先生方が指導教員という感じでした)もいますし、それ以外の学部の出身者もいて、割と雑多な感じ。私が金沢大学の修士課程でゼミに出入りしていた大澤善信先生(その後、関東学院大学に移られました)は中央の法学部のご出身だったかと思いますし。

ま、そういうバックグラウンドの若い人たちが、徒党を組んであちこちで小競り合いをしたり、野次馬として見物に行ったり。

そんな光景が、20世紀末から21世紀の冒頭、私が修士~博士課程にいた時代の日本の社会学系ウェブの日常だったように思います。

私はホクレアに関わりだした2005年くらいで、そういう世界とはきっぱり縁を切って、全く交わらないようにしました。2007年からは大学でも教え始めましたから、尚更です。匿名でウェブにものを書くことはたしか博士号を取る前後から一切やらなくなったので、学生たちに見せても問題の無い振る舞いを特に心がけましたね。

あの頃、ネットでガラの悪い社会学徒を演じていた人たちも、かれこれ20年くらい経つわけですから、それぞれ立場も変わり、皆さんさすがにもうやってないだろうと思っていたんですが、大澤真幸の『社会学史』についてのブログが界隈で少々バズった結果、旧車會のようなものを一瞬見てしまいました。彼を見たのは17年ぶりくらいかな。特攻服を着て爆走してたよ。

懐かしさと、それ以外の曰く言い難い感慨と。

ああ、あの頃のままに走り続けている男が、まだいるんだ。

凄い。

ちょっとカッコいい。だって(多分)みんな飽きて止めちゃったか消えちゃったか、堅気になったかだぞ。死んだやつだっている。

社会学を教えるとか、社会学を通して人を育てるとか、社会学を生かして商品やサービスを作るとか、社会学を生かして組織を変革するとか、とにかく何らかの形で社会学「からの」創造に進むと、学説史の知識やインサイダーの人脈を溜め込むことは社会学の本質とあまり関係無いと実感出来ます。社会学と社会が交接する領域に持っていってこそ、自分の身につけた社会学のうちどれが本物で、どれが付け焼き刃なのかがわかる。

そういう場を持たなかった好事家の限界かもしれませんね。

後から来て、あっという間にスターダムに駆け上がった古市憲寿にばかり目が行っていたけど、彼もずっと続けてたんだね。知らなくてごめん。その生命、燃え尽きるまで、感じの悪い社会学マニアとしてインターネットを駆け抜けろ!

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