彼らがイラクとシリアに跨る地域を制圧していたのは2014-2017年にかけて、足掛け4年間ほど。
彼らの台頭はイスラム世界の不安定化や宗教紛争、グローバル・ジハードという文脈で語られることが大半ですが、私はもう一つ、2010年前後のインターネット文化を終わらせた最も大きな要因だったのではないかと考えています。
思い出して欲しいのですが、2010年から2013年ごろ、ちょうど私が立教大学でゼミ指導をしていたり、ファザーズバッグを作っていた時期というのは、今よりもインターネットは開けていました。いましたよね? 今よりも風通しが良く、見晴らしが良かった。会ったことも無い人にどんどんリーチ出来て、意見交換や情報交換が出来て、世界にはこんな面白い人、こんな面白いもの、こんな面白い動きがあるんだ、という驚きが毎日毎週ありました。
そりゃイケダハヤトとか安藤美冬みたいな妙な人材が適当なことを並べていたりもしたけれど(憶えてますか? 安藤美冬のサバイバルキット)、そういう適当さも許される雰囲気がありました。まあやってみれば、みたいな。インターネッ党とか。スタディギフトとか。有象無象のキュレーションメディアも雨後の竹の子のごとく出てきていたあの頃。
今はどうでしょうか。
ITスタートアップはユニコーンと呼ばれるメガスタートアップが幅を利かせる一方で、ちんまいスタートアップはなんか手堅すぎるか、真面目すぎるか、詐欺まがいの情報弱者対象モンキービジネスかになり、儲かるのかも成立するのかも未知数過ぎる、いやそれ以前にお前ら面白さしか考えてなくないか、という、そんなこと考えてなんかやってるという奴らがいるというだけで人生観が変わるようなのが見当たらなくなった。
そういう面白情報を我々のところに届けてくれていたキュレーションメディアはPV狙いの著作権無視炎上バイラルメディアばかりになり、DeNAのやらかしで存在そのものが殆どトドメを刺された。
人々の多くは匿名の消費自慢SNSであるインスタグラムに集まり、リアルの知り合いとしか交流しなくなった。
特に若者ね。
若者がガチガチにガード固めて自陣ゴール前でボール回して、敵が攻めてきたらとりあえずボール蹴り出して試合止める、みたいなことしかしていない。違いますか? フェイスブックはおじさんしか居ないと言われますが、おじさんの方が活発に未知との交流をして何か始めたりしているこれって、不健康ですよ。
そういう雰囲気、目立つのは危険、見晴らしの良いインターネットに居るのはヤバいという空気を作ったのって、「イスラム国」だったんじゃないかなあと今になって思います。見晴らしの良いインターネットってこんな邪悪なものも産み出しちゃうのかよ、という衝撃。
その「イスラム国」がようやく失速した2018年。
もう一度、見晴らしの良いインターネットの時代、愉快なバカが地中から這い出して来ては我々の人生観を笑わせてくれる時代が来て欲しいなあ。
さてゴミ捨てて来よう。