「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」感想。

「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」感想。

 

 

資産家の個人コレクションなので「手頃で手堅いものを薄く広く」揃えているという印象。大型公立館のブロックバスター展ほど見どころははっきりしないが、落ち着いて見られるのはメリット。

モネやルノワールやセザンヌやスーラなど、有名画家の作品が一通り揃ってはいるが、一級品とまでは言えないかなと。あと、印象派の絵をルイ14世様式やルイ15世様みたいなクドい額に入れるのは止めた方が良いかもしれない。

印象派~後期印象派の部屋の隣が大正期の洋画の部屋というのは、意図したわけではないだろうが面白かった。教え子たちと「ここ、時代が巻き戻ってるよね」「何でこんな暗いの」「岸田劉生が麗子像描いてる時にピカソはキュビズムやっててデュシャンは泉を作ったのか」と苦笑い。

美術史という視点で見るとやはり日本の「洋画」というのはガラパゴス化した特異な文化なんだねというのが非常によくわかるという点で、教育的か。集めやすいから点数は多いけれど、これは良いねというものはそこまで多くない。関根正二の「三人の顔」は好評だったかな。

レオナール・フジタの部屋。顔の描き方とか色調とか、フランスで売れるために日本的な要素を上手く使っているという分析が一緒に行った教え子から。この顔、浮世絵ですよねと言われてみればたしかにその通り。

国産抽象絵画の部屋。やはり「悪くは無いんだけど」な空気が漂う。山口長男とか猪熊弦一郎とか。アンフォルメルや抽象表現主義をなんとかして輸入しようと悪戦苦闘してる感。そんな中で中西夏之の圧倒的バカバカしさは好評だった。ここに何かのヒントがありそうな気もするが。

舶来現代アート(杉本博司含む)は、少なくとも今回のメンバーにとっては一番文化的に近い表現だったようで、わりとスムーズに楽しんでいた(私のレクチャーの内容を理解しやすいという意味でも)。

話していてあらためて気付かされたのだが、彼・彼女らは90年代後半の生まれなので20世紀は数年しか経験していない。21世紀人。

だからかどうかはわからないが、大正時代の洋画や70年代以前の国産抽象絵画、国産版画などにはさほど興味を示していなかった。たぶん、これから国産洋画の市場は縮小していくのだろう。