「兵站貴族」は架空世界のお話なので、登場するモノも全て架空です。
架空とはいえ、人が使うモノである以上は、作中人物がそれを操作したり出入りしたりしなければならず、その際の描写をどうするのか、という問題が発生します。
最近やっているのは、まずは絵を描いてみること。
設定画というか、イメージスケッチというか。
そうすることで、モノを文章にしやすくなります。私の場合はね。
これは11章で主人公が使う馬車です。人間用の馬車。物語世界にはアスファルト舗装など無いので、道はガタガタです。ゴムタイヤもないから、タイヤで衝撃吸収も出来ない。そこでやはりサスペンション付きの馬車が必要になるだろうと。フルリジッドでは、とてもじゃないけど乗ってられないですからね。
そこで、17世紀ごろのフランスで使われていたベルリンという馬車の設計をベースに、ラダーフレーム+リーフサスペンションの馬車をデザインしました。
このラダーフレームは巨大な弓のようになっていて、人間は弓の弦の上に置かれた箱の中に乗っているというような構造です。つまりラダーフレーム自体がショックアブソーバーになっている。更に鍛鉄を贅沢に使ったリーフサスペンションを介して車軸を装着しています。二重のショックアブソーバーが入っているので、もしかしたら揺れかたが気持ち悪いかもしれません。サスペンションのチューニング次第でしょうね。リーフサスペンションはチューニングが難しいので、車室を支える革ベルトの太さや厚さで細かくチューニングするんじゃないかと思います。コーチビルダーの腕の見せどころですね。
御者は車両前方にハンモックを吊るして、そこに腰掛けます。これは2頭引きでしょうね。車両側にブレーキは付いていません。
これは官庁街や王宮から歩いて30分ほど離れた、そこそこの等級の住宅街です。
アルソウム連合王国の首都ゼルワの中心部は丘になっていて、その東側の中腹あたりにあります。画面の右手に向かって少しだけ上り坂になっていますが、舗装が切れて少し行った辺りから斜度が増して5%くらいになるはずです。画面の左は、かつての城壁を撤去した跡に作られた首都環状道路「カルム大通り」です。現在の城壁は画面の左に800mほど行った辺りです。
ゼルワ市はカルシ河という大河にサリル川という大きな支流が流れ込む場所にある、小高い丘に築かれた大都市です。標高は一番高い場所で100mほどで、この辺りは70mほど。カルシ河やサリル川の水面からの高さは30mあるので、堤防が切れてもこの辺は大丈夫です。だから「そこそこの等級」なんです。新城壁のあたりの標高は45mで、川が溢れると、場合によっては水に浸かるかもしれません。当然、この辺りより地価は低いでしょう。
屋根は灰色の家以外は寄せ棟作り、灰色の家は切妻作りです。小屋(屋根裏の骨組み)はいずれも木材によるトラス構造で、屋根瓦の色が同じなのは、同じ場所の土を使って焼かれているからです。外壁は煉瓦+漆喰と石積みとあるのですが、左端の家はほとんど漆喰が剥がれ落ちています。石積みの家(左から3軒目)と道路の色が同じなのも、同じ石切り場の石材を使ったからです。
窓は全て鎧戸で、ベンガラや緑青で塗られています。扉は広葉樹を板目に取って接ぎ合わせたもの、窓の面格子は鋳鉄です。