『竜の居ない国』の主人公の声優が決まらない件

『竜の居ない国』フィードバックがまた1件届きました。

アニメや外画の音響制作の仕事を長年やっておられる方から。

まずは課題。箇条書きにすると

  1. 法律やマクロ経済の話が難しかった
  2. 登場人物の名前が憶えづらかった
  3. 地理がイメージしづらかった

確かに。架空世界でここまで細かく法体系やマクロ経済について設定している作品を私は寡聞にして知りません。例えば法体系はこの架空世界の架空の国家「アルソウム連合王国」には以下の四つが存在しています。

  • 部族法
  • 共有法
  • 帝国法
  • 宗教法

それぞれ、モデルとなっているのはゲルマンの部族法、イギリスのエクイティ、ローマ法、カトリックの教会法です。何故そんな設定を作ったかというと、日本国にしろヨーロッパの諸国家にしろ、法律というものは複数のルーツから、それぞれ別の思考をもとに組み上げられており、結果としてそれがあたかもドラゴンやキマイラやコカトリスのような一匹の幻獣のような生き物になっていると思うからです。

そして、そうした幻獣と戦うことが出来るのは、きちんと大学で法学を学んだ人間だけです。

『竜の居ない国』の主人公ヴェレン・ソル監察官は日本で言えば東大法学部、近世スペインで言えばコンプルテンセ大学法学部を出た人物。ネタバレなので詳しく書けませんが、敵もまたヴェレン以上に法律や経済を知り尽くした知的エリートです。二人の戦いは、連合王国の中でも見える人にだけ見えている、法律とマクロ経済という二匹の巨竜の動きをいかに制御し、自陣営に有利な形で活かしていくかというものなのです。

なので、「一般人には入門の敷居が高い世界」を物語空間の中に設定せねばならず、そのために上記の四つの法体系を作ったというわけです。

ポストRPG魔法ファンタジーが「炎属性」「水属性」「風属性」「土属性」みたいな属性魔法を設定しているのと、ある意味、同じですね。

メインヒロインを聞き役にして出来るだけわかりやすく解説はさせているのですが、「読み手を選ぶ」ことは確かでしょう。もう少しわかりやすく書けないか、もう一度見直してみようとは思いますが、最終的にはどこでバランスを取るか、正解はありませんね。想定読者層との兼ね合いとなりますが、もとよりヤングアダルトではなく30-40代をターゲットとしていますので、そこそこ硬さも残しておきます。

人名や地理は、登場人物一覧と地図のデザインを見直して対策します。

上記以外の感想は

  • 「レピ(セカンドヒロイン、27歳バツイチ、デキ女)は真綾さんですね」
  • 法律や経済がわかっている人が読んだら絶対面白い
  • 主人公のキャラがよくわからない。リアル過ぎて、どんなステレオタイプにも当てはまらない

セカンドヒロインが坂本真綾さんの声のイメージというのは、その通りです。ほとんどアテガキで書きました。

アニメの音響制作をしている方だからこそ仮想キャスティングからもいろいろと得るところがあるのですが。

ちなみに敵の総大将は遊佐浩二でアテガキ(アリですね、と言われた)。

傭兵隊長ジェミは大塚芳忠さん。これは我々の間では言うまでもない、みたいな前提事項(あれ、ウラタロスとデネブ?)。

で、主人公は誰を当てたら良いのかわからない、と。つまり既存テンプレには無いタイプなんですね。

探偵役なんだけど、自信満々タイプ(江戸川コナン、シャーロック・ホームズ、明智小五郎)ではなく、挙動不審タイプ(金田一耕助、御手洗潔)でもなく、他人に興味が無いタイプ(犀川創平)でもなく。

貰っている給料以上の仕事をしている自信はあるし、チームを率いているので常に周囲に現状を説明してコミュニケーションを取る必要もあり。

じゃあ何のドラマ性も無い奴なのかというと、「給料分の仕事はした。じゃあ次はどうする?」というポイントで、常に、より不確実でボラティリティが大きな選択肢を選ぶ。それを積み重ねていった結果、最後に超大物との一騎打ちをやるところまで進んでしまい、ついには判定で6-4の優勢勝ちに持ち込んでしまう。何でそういう選択肢を自分が選んでしまうのか、本人もよくわかっていない。最後の一騎打ちの場まで行ったところで、対決の相手に「だってお前はそういう人間じゃないか」と指摘されて、ようやく自分が何者だったのかを知る、というキャラ。

既存テンプレだとアムロやシンジくんやシモン(グレンラガン)や良太郎(仮面ライダー電王)みたいに、こういう子は巻き込まれ受動型の陰キャに設定して、周囲の状況が勝手に彼を最終決戦まで連れて行くようにするか、朝倉リク(ウルトラマンジード)や半沢直樹みたいに、とにかく無闇矢鱈と前に出続ける暴走キャラにするか。でも、彼はそのどっちでもない。

常にリスクとボラティリティを秤にかけ、チーム内の意思統一にコストをかけ、貰っている給料に見合うのか、働きすぎにならないかを考えた上で、許容範囲ギリギリの攻め手を打つ。

そんなキャラを主人公にして大丈夫なのか? どうなんでしょうか。よくわかりません。書いていったらそうなってしまった。

あ、メインヒロインは福圓美里さんが良いです。

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