去年のNovelJamから1年後にここに自分が立っていることを想像出来ただろうか?

そういえばNovelJam2019に応募したのは去年の8月末だったはずだが、それから1年間で自分がどこまで前進したか。

小説は60万字くらいは書いた(たぶんそれより多い)。昨日も2100字書いたし、今日も書くだろう。

60万字というのはラノベ換算だと7-8冊である。テンプレと手癖で書けるラノベとは全く違うものを書いているので、ラノベを年間8冊書ける人でも自分が書いたようなものは年間1万字も書けない人のほうが多いはずだ。

逆? 自分は文体模倣も作品構造分析も未知の分野の高速学習と適応も得意中の得意だから、無論、出来る。

「小説について」も膨大に書いた。

この1年間で最も驚いたのは、日本で小説について何かを語っている人たちのうち、研究者以外のほとんど全てが、大学の学部の講義で教えているようなレベルの文学理論や歴史や周辺諸領域の知識すら一切参照していないということだ。

学部入試の難易度を採用シグナリングに使って、あとは「実務経験」だけがシゴトについての権威になるという日本独特の風習は、小説という世界でもバリバリに存在していた。

(悪いとは言っていない。驚いただけだ)

そうそう、この1年間で小説を書くことで得た収入はおよそ30万円だ。

売り上げ底辺レベル(3巻で打ち切り必須)のラノベの初刷の印税くらいは稼いだことになる。

もちろん同じ時間と情熱をUnityかなにかに投入すればこの10倍は稼げていただろうが、自分の小説はUnityでもラノベでも表現出来ないものを表現しようとしていて、たぶん20年後でも読む価値があるものだから、そういう浮世を越えたものを通して得たにしては悪くない稼ぎだ。

昨晩もまた8年前の教え子が難しい相談をもちかけてきたが、いつか自分が彼女・彼らの相談に応えられなくなったときでも、「だいたいのことは小説に書いておいたから、それを読んであとは自分で考えてくれ」と伝えることが出来るだろう。

NovelJam2019に応募した時点では小説を完結させて発表した数がゼロだったから、ウェブライターやコピーライターやシナリオライターや同人作家たちに「小説家」のスロットを譲り、「編集者」に回らざるを得なかったが、あそこから小説という道を一番長く歩き続けたのは自分だ。

1年間に数千字、せいぜい1万字か2万字を気が向いた時に書いて短編文学賞に応募して「小説書いてます」というレベルはとうに突き抜けたはずだ。

と思っている。