昨日、原稿を簡易書留にて発送。
そして本日、配達確認。
これにてプロジェクト完了です。
プロジェクト着手が2019/3/5で、最終校正完了が2019/6/20。最後の半月はピアレビュー&フィードバックに使ったので、書いていたのは3ヶ月ぴったりでした。文字数は170394。原稿用紙換算483枚。
論文や評論は山ほど書いてきましたが、小説は初めてですし、10万字を越えるような文章も未経験。
100%出来るという確信は無かったのですが、手持ちのスキルを総動員して行けるところまで行ってやれという発想で進めました。
すなわち
- 最初に目標を公言し、進捗を常に公開する。
- 一つの新規事業開発プロジェクトと位置づけ、標準的なプロジェクトマネジメントの手法を適用してスケジュール管理や品質管理、スコープ管理などを行う。
- 初稿完成から最終稿までの品質管理は論文指導のスキルを流用する。
- 商品開発プロジェクトであることを意識し、他との差別化ポイントの明確化、圧倒的な強みの先鋭化、ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンスのバランス調整を入念に行う。
- ローンチのチャネルはレバレッジの大きなものから順に数段階を想定し、状況に応じて柔軟に展開する。
- 可能な限り多くの情報を出し、ウェブ上でのプレゼンスを高める。
最初の三つはモノ作りの視点、残りの三つはマーケティングの視点ですね。
これでも一応、色々とウェブ上にある諸先輩方(トッププロの人、駆け出しプロの人、プロ未満の人)の言説はチェックしたんです。初期段階で。なにしろノウハウゼロですからね。
そこでわかったことは、プロ未満の人や駆け出しの人、一度は何かの賞を取ったけどその後は鳴かず飛ばずの人は、まずもってスケジュール管理や品質管理、スコープ管理などが出来ていないということ。書けないとか締め切りがとかそんなボヤキを自慢げにSNSに書いている。逆にトッププロの、例えば森博嗣先輩や魔夜峰央先生などは、コンスタントにペースを刻んで書いている。真似するべきは後者です。これについては私はプロジェクトマネジメントや論文指導でお金を取る人間ですから、当然、出来る。
文体は品質管理の一貫としてマネジメントしました。論文文体と小説とは違うので、既存のスキルがそのまま使えるわけではないですが、これは友人知人教え子にピアレビューを依頼してフィードバックを貰ってギャップを埋めました。もちろん流行のもの(異世界転生ラノベ)も色々と調査して、文体の特徴はわかりましたが(体言止めとか、擬音の多用とか、属性値やレベル値によるキャラクター表現とか)、私はそういうものを殆ど読まないし、良さもわからないので、相手の土俵で戦うべきではないと判断して、ラノベ文体は取り入れず。
UI/UXで気をつけたのは2点。まずは導入部をいかに切り詰めるか。これは審査員の恩田陸、初年度大賞の酒見賢一、前年度大賞の大塚巳愛の作品の分析によって、ある程度の感覚を掴み、あとは論文指導スキルを使って不要な情報を徹底的に切り捨てます。また表記揺れや言葉のリズムは、何十回も読み直してその都度気になる箇所を修正というやり方を使いました。
ローンチのチャネルは最もレバレッジが効く「日本ファンタジーノベル大賞」を第一目標とし、次に編集者が尖ったものをピックアップすることで知られるメフィスト賞、その先はセルフパブリッシングか別のコンペかを別途判断です。また、同じ物語世界を使った別の作品をフィードフォワードとして書き起こしておいて、ローンチ後の「二の矢」「三の矢」を射つべきタイミングでタイムラグ無く打てるようにしておきます。
そして最後。これは非常に驚いたのですが、これだけ大きなコンペなのに、大賞受賞者でもオウンドメディアマーケティングをやっていない人が大半です。ツイッターアカウントがあれば良いほう。せめて最終候補作まで残ったら、ウェブマーケティングはやるべきだと思うんですが、最終候補作の人の名前を調べても、正体不明行方不明の人がほとんどです。もったいないじゃないですかそれ。日本ファンタジーノベル大賞で最終候補作で名前が出たら確実に検索されますよ。そこからビジネスチャンスを掴める可能性も小さくないはず。「大賞外した作品、読ませてください」って他社から声がかかるかもしれないじゃないですか。その時に6時間以内にレスポンス出来る準備は、ビジネスならばあって当然と思うんですけども。
だから、私の場合はコンテンツそのものはリッチなので、「小説はこれ1本を記念受験で書いてみただけ」ではないことが、すぐにわかるようにしておく。「二の矢」をいつでも射てるようにしておく。
やれる限りのことはやっておかないと。