武居奈緒子『三井越後屋のビジネスモデル』書評

武居奈緒子『三井越後屋のビジネスモデル』(幻冬舎メディアコンサルティング、2015)

書評です。

著者は神戸大の博士課程を出て摂南大教授。学位は博士(商学)。

最初にレーティング行きましょうか。五つ星で評価するとこれは星二つ。駄本でした。

理由を以下に箇条書きしておきます。こんなものを出して恥ずかしくないのか。

・越後屋創業から三井物産の立ち上げまでを扱い、三井家の経営手法が日本的でありそれが三井グループを繁栄させ続けたと論じているが、他との比較を一切行っていないので、何が三井的なのかわからない。

・呉服屋のビジネスモデルが小売業から産地への投資やサプライチェーンの整備、従業員教育、金融業などに展開していったのは事実だが、それは三井家に限った話ではないし、ビジネスユニット間が横で情報交換する体制を日本的と主張するのも論証不足(たぶん外国企業にも幾らでも事例があるかと)。

・呉服屋のビジネスモデルの分析については先日紹介した林玲子『江戸店の明け暮れ』における白木屋の事例研究の方が遥かに詳細かつ深い。

・一次資料の丸写しによるページ数稼ぎがひどい。

・個々の一次資料の分析も、卒論みたいな浅さで膝カックン。