私が専門性を有する分野(翻訳、社会学、芸術学)では、専門性を獲得して一人前のプロフェッショナルになる過程においては「自分がどうしたいか、自分がどう感じるか」は二の次というか、そもそも考慮の対象外でして。
訓練のされ方には色々な形がありますけれども、とにかく基本とされる仕事の仕方があって、それをひと通りは身につけないと発注が無い。また発注された仕事についても「自分がどうしたいか、自分がどう感じるか」など言えるのは、標準レベルを軽くクリア出来る人になった上でのお話です。
たしか大学生の頃も、大学を出た後も、まず問題なのはいかにして仕事を確保するかであって、仕事をゲトする分野については主体性を持って選べはしましたが、その分野の中では「あなたの感情」なんて誰も斟酌しなかった。本人も、周囲も。
あんたが選んでこの業界入って来たんでしょ? だったら一人前になるまではあんたがどうしたいかなんて関係無いよ。なんてことさえ当たり前過ぎて誰も口にもしなかったような。
今の若者が学校教育過程の出口でエントリーシートや自己分析というツールによって、「あなたはどうしたいか、あなたはどう感じるか」を根掘り葉掘り聞かれているあの様相の件。私はよく知らない世界ですが、今の日本の大きな組織の中では、一人ひとりの感情はそんなに大きなこととなっているんでしょうか。
分野を選ぶところで感情に尋ねるのはアリだと思うんですが、分野内でのlegitimacyよりもなお己のemotionを大切にする丁稚が居たりしてたら大変だろうなあ、という、大きなお世話かもしれない心配をしてみる夜。