坂口聖香選手がヨーロッパ移籍を中止し、SNSもアカウントを消したり写真消したりして消息不明の件。
現役チャンピオンが雲隠れというのは尋常ではないのですが、一歩引いて考えてみると、キャリアプランとして外国に行かないというのは合理的です。
彼女は現在21歳で今年度中に22歳。2014年に日体大に入っていますが風のうわさでは中退されたと聞きます。
シクロクロスでは現在、国内では無敵の絶対女王状態。特に路面が悪いレースでは元来力押ししか出来ない與那嶺は歯が立ちません。武田もやはり敵では無い。
しかしながらロードレースでは(パナソニック縛りで機材に圧倒的不利があるにせよ)萩原、與那嶺のトップ2には及ばず、牧瀬、梶原、上野、福田、金子、吉川といった第二集団の中です。
さあこの状況でどんなキャリアプランを描くか。狙える最高のイグジットは2020東京オリンピックでメダルを取ってタレント転身です(ルックスだけで言えば彼女は圧倒的に有利なポジションでしょう。次元が違うと言って良いくらいに。ただタレント業はルックスだけでは務まらないので、総合的な実力を考えたときにどうかはわかりません)。
とはいえ3年後ではまだ與那嶺は年齢的に全盛期。TTとヒルクラに特化して男子選手とサシでひたすら長時間走り込み、カネに糸目を付けない最高級の機材で出てくるはずですから、ドーピング発覚とか落車負傷といった巨大アクシデントでも無い限りは1枠は與那嶺で決まりでしょう。
(追記:集団が機能して単騎逃げを許さずにゴールスプリントに雪崩込めば與那嶺がオリンピック出場を逃す可能性はかなり大きいかも)
もう1枠を残りの選手たちで争うわけですが、30代半ばに差し掛かっている萩原・牧瀬は少し割り引いて考えるとしても、梶原は今より更に強くなっているでしょうし、山を上れる新鋭の福田も強敵です。スペインで走っている吉川もいる。この中で枠をもぎ取れる確率は10%内外。
更に問題があります。仮に枠を取れたとしてもメダルは取れません。それはこの春のクラシックレースでの與那嶺を見れば明らかです。狭いコースに本気のトップ選手たちが殺到し続けるレースをティーンエージャーの頃から経験してきた欧米の選手たちと、レースが始まってすぐに数人の先頭集団になって最後はゆったりゴールスプリントか逃げ切りか、というレースしか経験出来ない日本選手では、踏んだ場数が違い過ぎです。萩原のように長年ヨーロッパで走ってチームメイトたちからも信頼があり、勝てるステージではサポートがもらえるという選手は例外とみて良い。そもそもオリンピックに出られるのが2人か3人で、相棒が與那嶺ですからね。ゴール前まで献身的に引き倒して最後発射台やってくれるなんて100%有り得ません(2016世界選手権のように、自分が勝てないならテレビ逃げする人だと思います)。
つまり、東京オリンピックの枠を取るのがまず難しく、その上、出ても表彰台争いに絡むのは不可能。
ここまで計算してみると、費用持ち出し(月に20万30万は軽く出ていくと思います)でベルギーでプロとしてやったとして、その投資を回収出来る可能性は相当に低いことが見えてきます。
私なら競技はシクロクロスに絞り込んでロードレースは捨て、大学に戻ってきちんと卒業した上で、公務員なり会社員なりになって給与所得者として当面生きていくというプランを選びますね。シクロクロスならパナソニック縛りはハンデにはなりませんし、ロードレースのような長時間の練習も不要です。
だから、そもそもベルギー移籍はお薦めしなかっただろうな。私なら。