見る目が無いド素人が「Revealed – 3つの個人コレクション – 」を見てきました

あざみ野にある横浜市民ギャラリーで開催中のこれ、行ってきました。「3人の個人コレクション」という表記もあって謎なんですが、多分「3つの」がオフィシャル。「三つの」ではなくてアラビア数字なのもまあ、今はね。普通ですよね。

昔、coderdojoあざみ野で行ったとこなんで懐かしかったです。

以下は感想ですが、ともかく見る目が無いド素人の感想なので流し読みでお願いします。

  • 正面の横山奈美の絵は「なるほどアイデア賞だ」という感想。ウルトラリアリズム絵画の手法で現代アートに超よくあるネオンサインものを描いたというね。ひねりが効いていて好きです。画面の仕上がりも精緻。
  • ユアサエボシが3枚ありますね。私には良さがよくわからない画家ですがカラフルなのが好きな人は好きそうです。架空の画家ユアサエボシの設定があまり作り込まれていない(ように思える)ので、笑いどころがイマイチ把握しづらいと個人的には思います。小説とかマンガにも横展開するというのはダメですかね?
  • 土肥美穂のスカルプチャもよくわからないけど、似たようなものを息子が幼稚園のころいっぱい作っていて、それは良いのが結構あったんで保存してあります。
これは6歳の時の作品
これは息子8歳のときのもの。実に良い。ミニマルなもの派作品。
  • 友沢こたお、現物初めて見ました。このシリーズがいつ飽きられるか、そのとき次の弾があるかどうか、ですかね。個人的には特に欲しいものではないな。でもブランド品ですしね今。コレクターなら押さえておきたいとこじゃないでしょうか。これが彼女のシグネチャースタイルなのはもちろんわかりますが、シグネチャースタイルとしてもバリエーションが作りづらいような気がします。もちろん有名人とか有名キャラを片っ端からゲル責めにしていくような展開も無いわけではないですが、それはたぶん彼女がやりたいことじゃないですよねきっと。
  • スクリプカリウ落合安奈、よくわからないです。ボカシを物理的に写真に縫い付けたところが新しいのかな。
  • 森村泰昌、都築響一。パソコンのモニタで見てたあれを生で見たぞという、名所旧跡詣でみたいな感覚。これも大手コレクターなら「持ってます」ってのが大事なのかもしれない。
  • アフメッド・マナン。よくわからない。
  • 有賀慎吾。いいたいことはわかったという感想。マナン作品もですが、作品のモノとしての仕上がり、精度には個人的には疑問符です。
  • これは私のある種の弱点だろうとも思いますが、物体としての完成度というか達成度というか、そういうものをまず見てしまうので、今の日本を代表する現代アート画家の皆様の作品を見せていただける幸運に恵まれたというのに、「なんか安物のソフビ人形みたいにエッジも塗りも甘いなあ」という雑念が盛大に飛び回ってしまったのですよ。artefactとして背筋が伸びたものじゃないと受け付けないというね。
  • 今日確信しましたが、世の中に「現代アート」として提示されているものの99%はモノとしての仕上げ、完成度の追い込みのレベルで言えばトヨタ車より遥かに下です。動くお金の規模が違うから当たり前といえば当たり前ですけどね。
  • いや、実はワンフェスとかに出てるヲタグッズと比べても今日みた「現代アート」のモノとしての追い込みの甘さはかなりのものだった・・・ですが、私より見る目がある人たちが買ってるんだから、現代アートはあれできっと問題無いんだと思います。私個人の感覚のバグの問題です。ただし私と同じようなバグ持ちの人が多い場合、現代アートは日本では売りづらいという問題が発生するかもしれません。
  • お、塩田千春のスカルプチャはなかなか良いですね。でも彼女はやはり巨大インスタレーションが持ち味なんだろうなということも感じました。だってこれ、作ろうと思えばDIYで作れますから(そういう問題じゃない? 本当に?)
  • 本城直季の例の逆アオリ写真もあった。2006年当時は(イギリス辺りに既にやってた人はいたけど東京の風景でやったのは)アイデア賞だったよなーってこれ2022年の作品か。本城直季のこれが欲しいって人がずっといるのかな。2022年のプリントってことでしょうか? ローリング・ストーンズがコンサートで必ずジャンピングジャックフラッシュをやるのと同じなのかもしれない。シグネチャースタイルですからね。
  • 名和晃平はでかいの2枚。これは良いです。アートとしてもインテリアとしても手堅く高得点。仕上げの精度が別格。
  • 金氏徹平のスカルプチャが二つ。私はパーフェクトグレードのユニコーンガンダムの方が欲しいなとは思いますが、そんなものと較べたらダメですよね。すいません。ド素人過ぎる感想です。
  • 鈴木ヒラク、よくわからない。東京藝大の先生なんですけど。すいません。ほんとすいません。
  • 上野裕二郎、とりあえず画面真っ赤なのでそれだけでパワフルです。描画は個人的好みはもっとエッジの効いたものなんですが、それはもう金持ってない素人の感想でしかないので。
  • 仲衿香、大野修、多田圭佑、よくわからない。ごめんなさい。
  • ティルマンスの写真作品もありました。やはり良さはよくわかりません。ブランド品だからなー。でっかいやつだと違うんだろうか。リヒターとかグルスキーとかティルマンスは畳一枚くらいのサイズで見せてナンボみたいな気がします。風景写真ならもっと良いの撮る人はいくらでも(おい失礼だぞまるでサイズだけが取り柄みたいなこと書くなボケ)・・・・
  • ティルマンスのとなりはファドジュティミのテキスタイルアート。まあまあです。凄いとまでは感じない。前にタカ・イシイギャラリーで見た大型ペインティングは素晴らしかったんですけども。でもこれも凄い値段なんでしょうねもう。
  • これで一階見終わり。一階で一番良かったのは名和晃平でした。
  • 2階エレベーター出たとこはエレナ・トゥタッチコワのビデオ。すいませんノーコメントで。体が受け付けなかった。
  • 原口典之。モノ派の大先生。よくわからない。ホムセンでサブロク板を半分に切ってもらったのを貼り合わせて灰色に塗たくったり、その辺の解体屋でバイクの排気管かなにか買ってきて壁に飾って、ついでにchatGPTに適当な解説を吐かせてプリントアウトして貼っといたら大体同じになるような気がする(貴様、失礼だぞ)! いやほんとこの辺の作品の価値の99%は由緒書きにあるのでは? それはそれで現代アートっぽくて最高にクールだと思いますけど。
  • 風能奈々はテキスタイルデザインを絵にしたようなもので、これはインテリアとして良いと思います。ただ、本音を言うとフォークアートショップで20万くらい出すと買えるガチもんのスーパー刺繍アートの方が凄いとも・・・・(おい!)
  • ob、工藤麻紀子、Mr.、佐藤玲、名もなき実昌などキャラ絵系のコーナーに来ました。現物を見てもやはり私はオタクワールドの本物の絵師たちの描く絵のが凄いと思ってしまうド素人です。すいません。Mr.さんは最近の作品はもっとオーラありそうですけど。彼は本物のオタクですからね。
  • キャラ絵系の人だけど梅沢和木の絵だけは素晴らしいと思いました。これは良いよ。素晴らしかった。ほんとに。プライマリで彼の作品を買ったどっかの公立美術館の学芸員が数年でSBIに流したっていうけど、もったいないな。お金無かったんだろうか?
  • 大竹伸朗。よくわからない。あ、見終わった。
  • とにかくめちゃくちゃ空いていて見やすい展示会です。会場内にソファがいっぱいあるのもホスピタリティとして素晴らしい。
  • 作品の全体的な感想ですが、絵やスカルプチャとして圧倒的に凄い、誰が見ても持っていかれるというものはほとんど無いですね。ルノワールやモネやラファエロやベラスケスやシャガールやミケランジェロの名品みたいな「これはとんでもねえ代物だぞ?」という圧は。それがあったのは名和晃平と梅沢和木くらいかな。もちろん、ここだけの話ですよ(物理的・空間的に)。
  • 逆に言うとそういう美術史上のモンスターたちの作品と同レベルのものを出さなくても戦える世界ということで、他の絵描きさんたちにとっては朗報と言えるのでは。

以下は余談

アートコレクターという人たちはストライクゾーンが広いのかな。

私は好き嫌いのストライクゾーンが狭小だし、自分の好き嫌いに嘘をついて何かを良いとか凄いとか言うのは健康に悪いので、好きなものしか良いと言えないし所有もしたくないな。ギターも結局は本当に気に入ったものしか弾かなくなるし、カメラやレンズもそう。音楽もそう。

あと、今日改めて実感したんだけど、モノとしての仕上がりが甘いものは採点が非常に厳しいんですね自分。名和晃平作品は細部までピシッと仕上げてあった。でも今日見たものの大半は「これは凄い現代アーティストが作ったんです」という説明が無ければ(自粛)な仕上げだった。単純にモノとして見たらIKEAの家具みたいなレベルのね・・・・原口先生のやつとかはIKEA未満の(おい!!)

バンダイのSHフィギュアーツとかボークスの永野護メカの大型キットの作例とかと比べちゃうと、おいおいせめてもうちょっとモノとして緊張感あるものにしようぜと・・・まあ外野の素人意見なんで流してください。

こないだ見た田中武さんの新作展なんかはモノとしてもビシッと仕上げてあって絵も上手いしほんと欲しい作品ばっかだったんだけどね。

それと、今日、アニメ絵のキャラを描くタイプの現代アート画家さんたちのトップティアの作品群を拝観してやっぱり思ったんだけど、日本に限っても手塚治虫から60年の積み重ねと個々のキャラクターデザイナーの画風、そして時代ごとのトレンドが多岐に渡る中で、皆さんがチョイスしている画風がものすごく狭い領域に集中しているように思えるのは何故なのか。

彼/彼女らをスカウトするギャラリストたちとその顧客層が、「3ヶ月ごとに今期のアニメの総括と来期への期待」を半日以上かけて検討するようなアホどもではないから、アニメ絵といやあこういうのだろという「現代アートが考えるアニメ絵」みたいな汎用記号が成立しているということなのか。

ラノベ屋が考える「ファンタジー」が、ファンタジー小説100年の歴史の多様さから見ると呆れるほどにピンポイントに集約しているのと同じで。

あと、今日並んでた方々、東京の画廊で取り扱いが無い人っていただろうか? これは小山登美夫、これはタカ・イシイ、これはタグボート、これはSH、これはワコー・・・ある意味で東京の有力画廊リーグの取り扱い作家一覧見本市みたいなのになっていた気も。何百点も作品を集めておられるのであれば、これはメキシコシティのギャラリーで買いました、これはシュツットガルト、これはワルシャワ、これは台北ですね、みたいなバラエティが出ても良かったのではと。

以上、ド素人の感想でした。