何故、日本はEmerging Artistに投資しないのか(答え:アテンションエコノミーに頼りすぎだから)

ルイーズ・ブルジョワの蜘蛛(六本木ヒルズに置いてあるやつの別バージョン)が4000万ドルで売れたそうです

55億円くらい。

現代アート市場(国外)は完全に復調した模様。

以下、日本国内の現代アートの世界についての見解。

東京のデートスポットとしての現代アート展は完全に定着しているのですが、そこで扱われているのは欧米で評価が完全に定まった超大物か、ほぼ日本国内の文脈にのみ最適化されたドメスティックチャンピオン作家たちのどちらか。

英語では

駆け出し Emerging Artist

中堅 Mid Career Artist

大家 Established Artist

と言いますが、デートスポットで見られるのは外国人のEstablishedか、ほぼ国内でしか活動していないけれど国内では有名な人たち(国際基準で測ればEmergingかMid Career)。

集客力が無ければデートスポットベニューに呼ばれない構造があるからそうなるのも仕方がないのですが、この、言ってみればアテンションエコノミーだけで回っている構造が、同時に日本を現代アートの市場として二流の位置に押し留めているようにも思いますね。

デパートの美術部やザギン画廊で現代アートを扱っていますというところも、品揃えは「ウォーホル、バンクシー、バスキア、岡本太郎、奈良美智」。あとアンフォルメル系のデュビュッフェが何故か日本では人気ですが(笑) 日本国内的鉄板知名度のやつばっか。

何が欠落しているかというと、今現在まさにスターダムに駆け上がろうとギラギラしているEmergingからMid Careerのアーティスト。そういう層への投資が非常に細い。

でも、日本の現代アートコレクターで著名なコレクションを築いた人たちは、前澤友作が典型ですけど、まだ値段が手頃なうちに作品を買ってるんです。

詳しいポートフォリオは知るよしもありませんが、後にビッグになる作家だけ選んで買っているのではなくて、Emerging段階で1点が10万円からせいぜい30万円40万円くらいのものを株式投資信託の積み立てのようにして買っていった結果として、幾つかの作家が大化けして、トータルでプラスになっているという構造でほぼ間違いないでしょう。

ところが、ここでもう一度話が戻るんですが、日本には海外の将来有望なEmerging Artistの情報が無い。少なくとも日本語空間には全然無い。基本、英語でその種の情報を収集している私から見た感想ですけどね。

それどころかEstablished段階に到達した、今が旬! これから間違いなく値上がりするぞこの人的な作家ですら日本語の情報が全然無いのが普通です。

なんでそうなるのか?

資金をどう運用するかの問題なんだと思います。アテンションエコノミーの原則に沿えば、国内での知名度がばっちりの作家に投資するのが一番手堅いのです。まず外さない。赤にはならない。そしてリサーチのコストもかからんし、賭けの要素が限りなく小さくなる。

そういう発想の事業者が存在することももちろん良いのですが、積み立て感覚でEmerging Artistの作品を買っていくようなやり方と、それをサポートするビジネスもあって良いのではないかとあらためて思いました。

お前がやれって?

みんな僕の話、聞いてくれないんだもん。無名だからさ(笑)