『週刊アスキー』初代編集長・デジタルハリウッド大学教授という輝かしい肩書きの方が1年と5ヶ月前に秋葉原で始めたプログラミング教室があっという間に資金繰りで行き詰まって事業売却の憂き目を見たというお話を読んだ。
教室運営を手放して教材開発だけに事業を絞るも、こちらも苦しい状況という。
ちなみにこちらの教室、オープニングパーティーでは日本マイクロソフトの元社長とか、著名プログラマーの清水亮さんとか、週刊アスキー編集部の偉い人とか集まってトークショーもやったとのことですが。
教室の中身もちょっと調べてみましたが、清水氏が開発したMoonblockというブロックプログラミング系の言語を入門コースで使っているそうです。
傍目八目ですが、個人的見解を。
1) プログラミング教室はレッドオーシャン
そういう現場をかなりかなりかなり、リアルで観察してきた私の感想ですが、レッドオーシャンですね。市場のニーズは、そこまで無いように見えます。
理由はいくつかあります。
まずプログラミングがブランド進学には関係無いこと。
ブランド中学、ブランド高校、ブランド大学に我が子を入学させたいなら公文式とかSAPIXとか、しらんけどとにかくそういう、主要5教科のテスト得点力の短期的強化の教室に放り込む方が絶対確実で、絶対コスパ良いです。その先のお仕事人生でも、プログラム書くことで良いお給料を貰える人は自然科学系の学問を大学できちんと専攻したとか、高専でバキバキに実戦能力を鍛え上げられた人だけだと思います。今現在でもコーディングだったら中国やインドのすごい人がいっぱいいて、日本人は半端にしかプログラムのことわかってないくせにコーディングに口出すんじゃねえとか怒られていると、そういう会社を経営している友人に先週聞きました。
だったら、ブランド校の卒業証書を中高大と揃えて一盃口、これに残業力と転勤力と肝臓力を加えて二盃口、日本人なら自動的に一翻乗るからこれで満貫で人生手堅く乗り切る戦略を取っといた方が良いさ。ドラが乗ったら跳満狙えるし。
だから、親の食いつきも、そこまでではない。ちょろっと体験させてみて終わりにする家が大半に見えます。
それに、親がまずプログラミング教育ってなんだか全くわかっていないことがほとんどだしね。
ブランド校進学に重きを置く価値観とプログラミング教育はそもそも相性が悪いですよ。ブランド校志向は既存の社会秩序の上下の序列を当然視して、出来るだけその上の方に入り込もうという発想です。一方で、現在、最も普及しているプログラミング教材の根底にあるのはハッカー文化。実力とアウトプットが全てみたいな。
だから、そもそも客は少ないです。まだ。サイバーエージェントがやってるやつでもあれ、単独で黒字化できてるのかどうか、ちょっと確信持てない。プログラミングに本当に向いている子はScratchの次はプロゲートでしょ。リアル教室なんか、行かないよ。多分。
2) 教材はScratchの一人勝ち。
使用している人数が桁外れで、NHKが専門の番組を流してて、本もいっぱい出ていて、コミュニティが圧倒的に分厚い。NintendoやSONYやKORGが食い込もうとしたけど、Scratchの牙城にはかすり傷もつけられませんでしたね。勝負は付いてます。
そこにマイナーな独自言語を持ち込んでも、むしろ避けられる要因になるんじゃないでしょうか? 入門はScratchで、そこからUnityやPythonやJavascriptという流れはどう見ても2019年の鉄板です。Moonblock? なにそれ? ですよね結局。
潰れた教室の会長さん、4年前にはすごい威勢のいいことを書いておられましたが。
MOONBlockならば、必要に応じてJavaScriptのコードを挿入し、柵を安やすと乗り越え、MOONBlockのポテンシャルを超えたJavaScript本来のプログラミングが可能になるからです。
これはScratchにはない特徴でした。
Scratchだけを教えられた子供にしろ、BASICだけを教えられた子供にしろ、彼らはとても不幸に見えます。
どちらも牢獄の中で牢獄で暮らすためのルールを学ぶにすぎません。
Scratchで書かれた実用的なソフトウェアは、たぶんゼロです。ゼロでないとしても、限りなくゼロに近いでしょう。
でも、牢獄ってバカにしてた言語に負けた。残念。あんだけScratch煽ったら、よほどの因縁や遺恨があってアンチScratchの人しか客になってくれないし、でもそんな人がわざわざアキバまでブロックプログラミング習いに来るかな? プロゲートでテキスト系言語の独習に進むんじゃないの? それにScratch好きな人はお客さん絶対紹介してくれないよ。
3) 立地が悪い
小中学生メインターゲットなら、子供がわんさかいる住宅地で開校しないと。
なんでアキバ?
わざわざ電車賃出してまでそんな治安の悪いとこに我が子を通わせる親は些少でしょう。プログラミング教室にお金を払えるような意識高い系の親御さんは、そもそもアキバは、キモオタの街って見下してるんじゃないでしょうか? アキバなんかに通わせたらキモオタになっちゃうって思われるのではないかな。
4) まとめとして
日本ではプログラミングはまだまだ、ぜんぜんマイナーな文化です。そもそも日本社会で強い意思決定権を持っている層が全然そういうものに関わっていないし。
大企業の経営者。
教育委員会のおじさんおばさん。
政治家。
どうですか。全然プログラミングなんかしてるイメージ無いじゃん。プログラミングの現場に足を運んでる人が、どれだけいるのか。
そんな社会では、プログラミングなんてまだまだマイナー文化ですよ。サッカーでリフティング100回出来る方が絶対に良いね。ワードプレスのサーバ管理出来るよりリフティング100回! これですよ。肉筆で綺麗な字書ける方が、エクセルでマクロ組めるより絶対に良い。走るの速いとか球技が上手いとか部活大好きとか。その方が小学校や中学校や高校ではクラスカーストは上になれる。
そんな社会ですよ、まだ。だから、みんなサッカーや習字やテニスを頑張れ!
それでは今日の息子の名言を最後にご紹介しましょう。
「父ちゃん、ゼロワンドライバー(今日始まった仮面ライダーの変身ベルト)すら2段階認証なんだからね。セブンペイの社長はバンダイの5000円のオモチャ以下の存在だったってことだね」
でも二段階認証知らなかった社長、クビになってないんでしょ? 良いじゃん。すげえじゃん。限界無限だよ。