なんと、カタランだった(のかもしれない)!

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 ディスカヴァリー・チャンネルの「未解決の歴史」シリーズで面白い番組を放送していました。

コロンブスの正体は本当にジェノヴァの織物商のセガレだったのかという話。

少なくとも世界史の参考書にはそう書いてありますし、Wikipediaにもそう書いてある。が、スペインのある学者が、これに異を唱えて、ついにセビージャ大聖堂に納められているコロンブスの遺骨のDNA鑑定までやってしまったというお話です。

異説の根拠は以下の通り。

・コロンブスはイタリア語で書いた手紙を一切残していない。
・コロンブスの妻はポルトガルの貴族の娘であったが、ジェノヴァ人説を採れば1492年の凱旋以前のコロンブスはただの探検家であって、そんな家柄の嫁を娶るなど有り得ない。
・コロンブスはスペインのカトリック両王(カスティリア女王イサベルとアラゴン王フェルナンドの夫婦によって、当時のスペインは統治されていました)の前に現れた時、既に豊富な地理学や天文学の知識を持っていたが、一介の船員として出発したはずのコロンブスが何故そんな能力を身につけていたのか。

そして、コロンブスの正体はおそらくカタルーニャの名家コロン家の私生児だったのではないかと結論していました。コロンブスの書いた手紙の分析によれば、彼の使った字体は当時のカタルーニャでは一般的なものであり、文章もカタラン語ネイティヴっぽいとかなんとか。

残念ながらコロンブスの遺骨からは満足なDNAサンプルが抽出できなかったようで、そちらからの情報は得られなかったそうですけれどもね。

それでは、何故コロンブスは自らの正体を隠したのか。

これはコロンブスの探検航海のスポンサーがカトリック両王だったからだそうです。かつてコロンブスはコロン家に従ってアラゴン軍と戦った事があり、その過去が知れるとフェルナンドに嫌われると考えたからではないのかと。

ロマンですねえ。
スペインの人々がそうやってコロンブス(スペインではコロンColonと呼びます)が果たして誰であったのかを、一生懸命調べ続けているのも、自分たちの国の歴史の巨大な転換点をもたらした人物について、もっと良く知りたいという情熱の現れでしょう。今更コロンがジェノヴァ人からカタランになったところで、ハプスブルグ朝スペイン王国が没落した歴史はひっくり返らないでしょうし、地方ごとに強いアイデンティティがあるスペインのことですから、「へぇ、そうなんだ。でも俺はアンダルーだから。」なんてリアクションも珍しくないと思います。ですが、その一方で、政府を動かしてコロンブスの遺骨を粉砕してDNA抽出までやってしまう人々がいる。

よくそんな許可が下りたなと思いますし、よくそんな資金を引っ張って来れたなと思います。なんせお金にならんですからね。今の日本なんか、「金にならない。」の一言で文学部(歴史研究は文学部のお仕事です)を片っ端から潰して回ってますから。

でも、こういう話を聞くと単純に面白いし、カタルーニャとアラゴンやカスティリアの関係も実感出来ます。自分の住んでいる国について、こういったトリビアルな知識がいっぱいあれば、愛着というものも湧く。自国の歴史や文化を学べというのなら、文学部に金を出すのだ。

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画像はセビージャ大聖堂の脇にくっついているヒラルダの塔。もとはイスラムのモスクの一部だったものを改装したとか。

 

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