国産ファンタジーではかなり古い(でもまだ続いている)グイン・サーガ。
主人公グインの国、ケイロニアの首都の人口が300万人とかいう凄い設定なんですが(歴史上、初めて人口300万人を越えた都市は19世紀末のロンドンで、近世以前はバグダッドとかイスタンブールの70万人くらいが上限)、他にも凄い設定が色々あったよなあと思いだしています。例えば首都だけで常備軍が10万人以上も雇用されていたような記憶がありますが、首都の人口300万ならそれくらいの財政力があるのかも。ま、軍事部分では荒唐無稽の極みみたいな小説ですからねあれは。戦争つうと片手剣持った軽騎兵が隊列も組まずにいきなり乱戦するだけの。槍も弓も使わない世界。
あと、23巻あたりで主人公グインがいきなりケイロニアの正規軍1万人を連れて逃亡するんですよね。自己申告で「ケイロニア軍じゃないです」と主張して、隣国に攻め込んで首都を占領してしまう。「ケイロニアが攻め込んだことにしないため」に。
今の国際法だと、これ、本当に本国の指揮命令系統から離脱しているならば、軍隊じゃないから、仮に敵に掴まっても捕虜としては扱われない。つまり敵の国内法で裁かれてしまう。ま、死刑ですわな。
実際には主人公グインは主君の言外のニュアンスを忖度して、1万人を連れて「逃亡兵」に化けたんですが、それで国際問題になるでもなく、帰国したグインはいきなり戦勝の褒美として昇進して将軍になっている。
それ、いくら「逃亡兵です」って自己申告しても、実は裏で本国の指揮命令下にあったのバレバレですよね。それが外交問題になるでもなく通ってしまう。遠征中の「逃亡兵」のお給料がどうなっていたのかは描写無いですが、もしもお給料も払われてたなら言い逃れ不可能。
それがアリならどこの国も便衣兵使い放題だろこれ。
ちなみに、その1万人の逃亡兵集団は、全て軽騎兵で、輜重部隊も連れずにイケイケドンドンで進撃していくんですが、さっき計算してみたら、1万人の軽騎兵を1日食わせるのに、人馬あわせて60トンの食べ物が必要なんですよ。5日で300トン。1ヶ月の遠征で1800トン。もしも現地調達でやっていたとしたら、グインと逃亡兵たちが通過した後にはぺんぺん草しか生えない荒野が残るのみだよな。
軽騎兵主体で長期遠征を繰り返していたモンゴル軍は、戦闘員の後ろに巨大な補給部隊がくっついてましたからね。
この食糧を全部、遠征先で都度購入していたとして、本当に彼らが進撃していった田舎で、いきなり今日来て今日の分のメシ60トンを買い付けられたとして、全てをコメで計算すると、1ヶ月あたりの食糧費が(物流費除いて)およそ2億7000万円。
一般的な金貨への換算で3375枚くらいかな。金地金で24kgくらい。それくらいなら持ち運べるか。でも逃亡する時にケイロニア王国の軍資金を持っていって、帰国したときに処罰もされなかったのだから、やっぱどう考えても便衣兵集団。