ホクレアに限った話ではないのですが、ある程度環境問題に関心を持って日本で生活していますと、あちこちで目にするスローガンがあります。
「六ヶ所村の再処理施設は1日で原発1年分の放射能を出す!」
以前から書いております通り、私は六ヶ所村の再処理施設については情報の少なさ故に判断保留という態度を取っているのですけれども、このスローガンを目にする機会が最近あまりにも多いので、原燃さんに問い合わせてみました。
問い合わせに際しては、問題の核心である「1日で原発1年分の放射能!」という命題の真偽を確実に示して貰えるよう配慮し、以下のような文面を用いました。また私の名前と肩書きも明示した上での質問でした。
「ご担当者さま
質問させてください。
六ヶ所村の再処理施設の稼働に反対する方々が必ず口にするのが「1日で原子力発電所1年分の放射能を出す」という主張です。小生としてはその「放射能」というのが放射性物質のことなのか、放射線のことなのかも気になるところですが、それはともかく、その主張の根拠となる論文や学術書がいくら探しても見つけられません。
そこでお伺いしたいのですが、再処理施設が稼働した場合、「原子力発電所1年分」の放射性物質あるいは放射線を「1日で施設外に排出・放出する」という命題は真なのでしょうか、偽なのでしょうか?」
原燃さんからは非常に丁寧な返答がありました(ありがとう)。それで、この命題の真偽値はどうだったのか?
「真」
原燃さんとしても、これは別に隠すようなことでは無かったようです。但し、このスローガンに使用されているレトリックについても理解して欲しいとのことで、以下のような補足説明をいただきました。なお、これは原文の転写ではないので、私の誤解が挟まっている可能性も若干あります。
・このスローガンにおける「放射能」とは、おそらく「放射能量(放射性物質が放射線を出す能力。単位ベクレル)」のことだろうと推測する。
・排出される放射能量の絶対量を単純に比較すれば、原子力発電所より再処理施設の方が一般的に言って多い。とはいえ、人体への影響を比較検討するならば、施設から排出される放射能量ではなく、個々の人体の被曝量(単位はシーベルト)を用いるべきである。
・原燃としては、以下のような計算により、放射能量はともかく人体の被曝量は法令に定められた年間1ミリシーベルトを下回っているので、六ヶ所村の再処理施設の稼働に問題は無いと考えている。
=以下引用=
再処理工場からの放出放射能量
気体 約332×10の15乗ベクレル/年
液体 約 18×10の15乗ベクレル/年
合計 約350×10の15乗ベクレル/年
これにより受ける線量は0.022ミリシーベルト/年
※国の安全審査で用いた評価値(事業指定申請書より)
原子力発電所からの放出放射能量
気体 約1.9 ×10の15乗ベクレル/年
液体 約0.0037×10の15乗ベクレル/年
合計 約1.9 ×10の15乗ベクレル/年
これにより受ける線量は0.014ミリシーベルト/年
※国の報告書「発電用軽水炉型原子炉施設の安全設計における一般公衆の
線量評価について」のケーススタディ(110万kWクラスのBWR)での値。(実績値ではありません)
=以上引用終わり=
これで、取り敢えず問題のスローガンの主張は(多分)正しく、しかし六ヶ所村の再処理施設が国の規準をないがしろにした極悪施設では(多分)ないことも解ったように思います。
ということで、私としては「引き続き経過観察」の立場を取りたいと思います。煮え切らなくて御免な。