航空貨物が船便より「環境に優しい」とは?

 拓海広志さんの中の人のインタビューが日経BPのウェブサイトに掲載されました。「物流のCo2削減は可能か?」という特集の一部で、インタビューのタイトルは「船よりも飛行機が"エコ"?1」というものです。

301 Moved Permanently

 拓海さんの中の人は「TNTエクスプレス」という会社の偉い人らしいのですが(笑)、この会社の事業内容は、大まかに言えば「飛行機を使って企業の在庫商品を運ぶ」というもの。ところが、ご存じのように飛行機というのは、単位重量あたりの二酸化炭素排出量の点で、船や鉄道に負ける存在です。だいたい自家用車と同じくらいに二酸化炭素を出すと言いますね。例えば50キロの荷物を自家用車で1000キロ運んだ時に排出される二酸化炭素と、50キロの荷物を飛行機で1000キロ運んだ時に排出される二酸化炭素の量は、まあ似たようなもん。

 となると、これは贅沢な輸送法ですよ。同じ車で較べてさえ、自家用車なんかよりトラックを使った方が遙かに二酸化炭素排出量は少ないわけですし、鉄道や船は更にその上を行って排出量が少ない。

 そんなら、飛行機を使う物流業がエコだなんてあり得ないでしょう。

 私もそう思ってましたが、中の人によると、案外そうでもないそうです。というのは、確かに荷物を運んでいる部分だけ見たならば、飛行機による物流は船や鉄道には環境負荷の小ささにおいて敵わない。しかし、船や鉄道を使った物流は、特に地球を半分も回るような遠距離のものになると、出荷地点から目的地に付くまでにやたら時間がかかる。その為に、企業はその荷物が消費される土地に大きな倉庫を造って、そこにある程度の在庫を貯めておかなければならない。また、賞味期限が短い商材(ファッション性の高い衣料とか、年に4回もモデルチェンジが入る弱電製品とか)の場合には、賞味期限が切れた瞬間に在庫もゼロにするということが難しいですから、どうしても倉庫で行き場を失ったり、廃棄されたりする在庫が出てしまう。

 この「隠れた物流コスト」も「物流における二酸化炭素排出」として見た場合、ものによっては飛行機によるジャストインタイム型物流の方が、中間在庫量を極限まで減らせる分、二酸化炭素排出量が少なくなる。これが中の人の指摘です。

 これは中々面白い考え方です。あるシステムを、環境負荷を減らすという視点で最適化するとしましょう。個々のパーツ単位で最適化したものを組み立てれば、全体としても最適化されているだろうと私たちは考えがちです。しかし、パーツとパーツの相性の悪さや全体としてのバランスの悪さによって、思わぬところで出力が食われてしまうことだってあります。単純な話、軽自動車のシャーシに超低燃費仕様の5リッターV8エンジンを載せたって、エンジンは無駄に重い上にそんな大出力はそもそも軽自動車のシャーシではコントロールできませんやね。

 これから私たちが環境問題を考える際に必要になってくるのは、部分最適ではなく全体最適を目指すという考え方でしょう。里山に生えている木を切る。そりゃエコロジカルじゃないじゃないかと思うかもしれないけれど、木を切った後にまた苗を植えて育てた方が、結果的には二酸化炭素吸収量は増えることだってありますからね。