『星の航海術をもとめて: ホクレア号の33日』新装版が出ました

昔の本なのであらためて内容紹介しますね。

分野はポリネシア考古学、文化人類学、教育学です。

著者のクセルク先生(故人)は軍勤務の後に天文学と教育学で修士を取って、ハワイ大学でずっと教えていた方。

登場人物は二人。若いハワイ人男性ナイノア・トンプソンと中年のミクロネシア人男性マウ。

1000年以上昔に人類が太平洋各地に船を使って移民していったときに、どうやってそれらの船は目指す小さな島々を見つけたのか、またどうやってそれらの島々を結ぶ航路を維持していたのかという謎を実証実験で解き明かした人々の物語です。

方位磁針もGPSも六分儀も無いのに、小さな船で太平洋のど真ん中を突っ切って何千キロも移動しちゃうわけです。古代ポリネシア人たちは。たとえばタヒチからイースター島やニュージーランドやハワイにはそうやって先住民が移民していったことがわかっているんですが、それ本当に出来るんかという。

具体的にどうするのかというと、航法担当の人がほとんど寝ないで自船の位置を把握するわけです。脳内に太平洋のイメージがあって、今その中のどの辺にいるのかを感じるんです。その上で目指す島の風上側に出るように航路を指示していって、星の動きでここが同緯度だという瞬間に船を風下に向けさせる。

4週間、全く周囲に陸地が見えない状態で太平洋のど真ん中を直線距離で4000km。実際にはそれよりも長距離を、カンだけで航法しちゃうなんてことが出来るのか。完全に途絶えてしまった技術をお隣のミクロネシアの先住民の協力で復活させるまでのお話です。

本来ならば幼少期から修行して身につける秘奥義を、ナイノア・トンプソンとクセルク先生はプラネタリウムというテクノロジーや西洋の天文学の知識を使って、今風に言えば「ハック」していくわけです。その一方でマウ先生に連れられてひたすら海を見る修行や海の上で波を感じる修行なども続けていく。

サイエンスとフォークロアを並行して勉強していったナイノア・トンプソンが、最終的にその二つをどう融合させるかというのがこの本のテーマです。

ビジネスでもスポーツでも学習でも、サイエンスでハック出来る部分と、そうじゃない部分がある、と書いてわかる人にはわかると思いますが、最後はそういう話になりますよね。

その一つの事例として、ハワイや考古学に興味がある人よりもむしろ、人材育成についてヒントが欲しい人に今度は読んでもらえればなあと.