金蓮花『蝶々姫綺譚』と朝鮮ファンタジーとポストコロニアル文学

金蓮花『蝶々姫綺譚』(コバルト文庫1995)入手。作者は在日朝鮮人3世でこのシリーズは朝鮮ファンタジーという、少女小説でも珍しいもの。

ちなみにこれが彼女のデビュー作ですが、文章はめちゃくちゃ上手い!! です。90年代後半のコバルト文庫を代表する作家の一人。

金蓮花についてはひかわ玲子の『ひかわ玲子のファンタジー私論』(東京書籍1999)にひかわとの対談が収録されていて、李恢成や梁石日のようないわゆる在日朝鮮人文学への違和感から少女小説へと展開したというような語りがあります。私はそこに興味を持ちました。

彼女は13年間の活動期間中に膨大な少女小説を発表したんですが、在日朝鮮人文学の系譜では全く知られていない。でも彼女自身は特に「銀葉亭茶話」シリーズは朝鮮民族としてのアイデンティティとの関わりで最も書きたいシリーズであると語っているので、ポストコロニアル文学としても読めるのではないかと。

ちなみに金蓮花のコバルト文庫作品の中古も品薄で、ものによってはびっくりするような値段になっています。80-90年代のファンタジー小説の文庫本は翻訳ものも含め超有名作品以外はもう片っ端から入手困難になっていくと思われるので、うかつに手放さない方が良いかもしれないですね。