野田知佑『北極海へ』書評

先日、大先輩のライターの友野伸一郎さんに頂いた本を読了。

表紙
 
野田知佑は学部生の頃に沢山読んでいる。記憶にある限りでは
 
『日本の川を旅する』
『魚眼漫遊大雑記』
『カヌーで来た男』
『のんびり行こうぜ』
『川を下って都会の中へ』
『ゆらゆらとユーコン』
『風になれ、波になれ 野田知佑カヌー対談集』
『川からの眺め』
『小ブネ漕ぎしこの川』
 
この辺は読んだ。
 
出版年を見ると見事に自分が学生だった1990-1994の間で読めるものに集中している。
 
当時は椎名誠とその友人たちがイメージリーダーになったキャンプブーム、アウトドアブームで、たしかバンドのキーボーディストが大学3年の時だったか、ユーコン川をカナディアンカヌーで下ってきた話を聞いて、羨ましいなあと思っていた。
 
息子が生まれてから毎年キャンプに行っているのも、当時やりたくてもカネが無くて出来なかった記憶が根底にある。
 
さてこの本だが、野田知佑の本は内容はどれもほとんど同じで、(幾つかの証言から推測するに)2倍から3倍くらいに膨らませたホラ話と与太が大半である。
 
恐らくこの本もそうだ。例えばマッケンジー川の源流域で野田が川幅3キロと書いているところも、グーグルマップで確認するとせいぜい1キロ強である。
 
22口径のライフルの銃身をナイフで削って折れたクランクシャフトの代用品を作って帰ってきたなんて、クランクシャフトの形を知っていれば「んなわけねえだろ!」と即座に気づく。
 
当時、野田の書物を基本的には酔っ払いの戯言だと理解して読んでいた人がどれほどいたのかはわからないが、まあ、いい時代にエッセイストをやっていた人だ。
 
さて本書。
 
そんなわけで大半は戯言なのだが、人里を離れてマッケンジー川の河口域に入ってから、北極海を漕いでトゥクトヤクトゥクの村にたどり着くまでの区間の描写は素晴らしかった。245ページから266ページだ。この本の価値の99%はこの21ページにあると思った。
 
いずれ、自分の小説でも誰か極圏に行くクエストを書いてみたい。その時には大いに参考にさせてもらうつもり。
 
友野さんありがとうございました。