書評:門田充宏『蒼衣の末姫』

門田充宏『蒼衣の末姫』(東京創元社・2021)

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蒼衣の末姫 (創元推理文庫) [ 門田 充宏 ]
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今時なかなかチャンスが回らない、ラノベではない異世界ファンタジーの完全新作ということで大きな期待を持って読んだ。

本作で最も称賛すべきは、これが紙の本として出版されたという事実そのものである。それ自体が壮挙だ。

それだけに内容が入念に練り上げられていなかったことは残念である。

基本的な構成はお姫様と捨て子の少年のボーイミーツガールものだ。異世界ファンタジーのど定番である。作者はこの定番を、作者の世代の日本人のSFファンが通ってきたビッグタイトル群(風の谷のナウシカ、守り人シリーズ、戦闘妖精雪風など)の影響を隠そうともせずに直球で仕上げている。そこまでは良い。

しかしながら、三人称叙述で視点人物が頻繁に切り替わる文体、似たようなカタカナ2文字名の脇役群、読み方が覚えづらいオリジナルの漢字モンスター名、戦闘シーンで突然出てくる近代科学用語の数々、ストーリーにほとんど関係ない煩瑣な設定、どうにも人間的魅力を感じられない紋切り型のヒーローとヒロイン、最後まで回収されなかった大伏線(結局、何でモンスターは異常行動でヒロインを狙いつづけたの?)など、デビュー済みのプロ作家の書くものとしては正直、かなりレベルが低いと思う。

デビュー前のハイアマチュアでももっと(色々な意味で)良い作品を書いている人は多いだろう。

次回作に期待したい。