新井紀子はGoogleに負けたのか?

私のブログは「新井紀子 批判」で検索して来る方が毎日いらっしゃる不思議な場所で、一体どれくらいの検索順位で出るんだろうと思うわけですが・・・

今調べたらこの記事が2位だった(・∀・) なんでそんなことに・・・・やばいよやばいよ。
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いやあこれ私もう金輪際科研費なんか通らないじゃないですか!
※笑うとこです念の為。
※科研費は研究者番号というのを付与された高位の研究者しか申請出来ないものです。私は持ってないよ!
※ジャンル違いでもある。彼女は数学、私は社会学。
こうなったらもう失うものなんか無いので、引き続き新井紀子先生について色々と考えてみたいと思います。
今日はこんなまとめがバズっていました。
かいつまんで言うと、
・新井紀子が東ロボちゃんプロジェクトで取り組んでいたタスクの一部である、コンピュータによる文意理解(の代用となる機能)において、東ロボたんが開発中止になってから超速の進化を見せている。
・特にGoogleが開発しているBERTという仕組みが凄いらしい。
・新井紀子はコンピュータには文章読解は無理と言っていたけど、間違いだったんじゃないの?
という指摘です。
これについての私の考えを述べます。
うろ覚えではありますが、新井紀子が主張していたのは「機械には自然言語で使われる言葉の意味を人間のようには理解出来ない」だったと思います。また、文章の読解力についても、彼女の開発したRSTというテストで、彼女が生みの親のくせにモラハラとDVの限りを尽くす(「空気読めない」とか「MARCHは入れるけど東大は無理だった」とか言いふらす毒親怖いっす)可哀想な子の東ロボさんに負ける中高生がいっぱいいたし、東大生でさえ東ロボにゃんに負ける子が珍しくなかったから、日本の子供はコンピュータより読解力が低い、というのが彼女の主張だったはずです。
一方、BERTが達成したのはスタンフォード大学による言語理解のベンチマークテストにおける人間以上のスコアであって、BERTが人間と同じような仕組みで言語を理解しているわけではないことに注意が必要です。
つまり、今の所、Googleのバートくんは新井紀子の主張を覆してはいません。東ロボ姫とバートちゃまは直接干戈を交えたわけでもないので、実際には東ロボPの方がハイスコアな可能性さえゼロではないのです。
とはいえ。
実際に作るかどうかはともかくとして、Googleがカネに糸目を付けずにやれば東大入試を突破するAIは、1年以内に作れると私は予想します。
一方、人間と同じような仕組みで、同じように自然言語を理解し操るAIが実現するかどうかは、私にはわかりません。出来ないとは言い切れません。出来るとか出来ないとか断言することは、研究者の端くれとして、出来ません。新井紀子は少なくともディープラーニングでは人間のような形での意味理解をコンピュータに実装することは出来ないと考えているようですが、それもまた何とも言えません。断言出来るほどの材料が無い。
断言出来ないという視点から、少し話題を広げてみましょう。
新井紀子が言うように、RPAなど業務用AIの実装が進む社会は、失業者であふれるのでしょうか。実際に先日会った教え子は、年末調整を今年からAIがやるようになったので、11月だけどヒマで困ってますと苦笑いしていました。こうしたバックオフィスのマンパワーの余剰に対し、日本企業はバックオフィスからミドルオフィスやフロントオフィスへの配置転換で対応するというアナウンスをしていますね。新井紀子がテレビで執拗に噛み付いていた(スタンドプレーにも程があるだろうに)ソフトバンクもその方針を明らかにしています。
それに対応する処方箋は、やはり新井紀子の言うようにRSTで読解力を分析して、受験ブランド校の入試対策をすることなのでしょうか。
AIが本当に失業者を増やすのかどうかは、その社会の制度にもよりますし、社会制度は常に変化しますし、そもそも社会は複雑すぎるので、実際に何が起こるのか予想は不可能です。
そしてRSTのスコアアップによる失業回避という発想も、筋が違うと自分は思います。が、これも正しい答えは私にはわかりません。
ミッチェル・レズニックらがScratchを通して進めている創造性を養う教育が答えなのかというと、やはり同じ話で、社会は複雑すぎるので、何とも言えないという結論になります。レズニックらのメソッドが合う子は少なくないでしょう。今現在の世界の初等中等教育のレベルを、レズニックらのメソッドが進化させることはまず間違い無いでしょう。でも、個人がいくら創造的になったとしても、組織のありようがそれに合わせてアップデートされなければ大半の創造性は組織の中で殺されてしまいます(骨身に沁みてるよ教え子たち見てて)。
かように未来予測は難しく、「少なくともこれだけは言える」ということを多くの研究者が持ち寄ってすり合わせて積み上げたとしても、やはり難しい。
一方で、新井紀子は断定が大好きです。
これはこうだ! と言い切る。
反論すればアカウントブロック。
反論しそうな気配を見せただけでもアカウントブロック。
目障りな論敵は科研費審査で落とすと恫喝してみたり。
論敵を黙らせるのに夫(数論の権威)の名前を持ち出したり。
こうした振る舞いは、研究者としては明らかに下品です。今回のまとめがバズった背景には、そうした品の無さへの反感もあるでしょう。
彼女は良くも悪くも「極道の妻たち」の岩下志麻のような姉御キャラで、相手をねじ伏せるためなら研究者として明らかに踏み外したことも平気でやる人です。
ですが、商品としての新井紀子の魅力もそこにあります。
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この啖呵! お前がもっと高性能な東ロボを作ってみせるまで一切聞く耳は持たないって、あんたそれでも研究者か(笑)

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姉御! そう来なくっちゃ!!! 
・・・実際、今の彼女には「売る」力があります。これは私も含めてビジネスパーソンなら喉から手が出る程に欲しい力です。彼女の個人的関心は既に勝ち目の無いAI開発からRSTをテコにした教育産業への進出へと移行しているように思いますが、いずれにせよ彼女が「売れる」人間である限り、取り巻きは寄ってくるでしょう。RSTが齋藤孝の「声に出して読みたい日本語」みたいに大当たりすれば、文科大臣さえ夢ではないと思います。
きっとそこは、彼女がこれまでの生涯を賭して追い求めてきた何かが最大限の規模で成就する場所でしょう。
仮にそうなったとして。その椅子の上で彼女が何を創り出すのか。それは私にはわかりませんが。
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