私がなぜ、ラストショットブック&トートを「3500円」で、「科学館のミュージアムショップ」で、売ろうとしているのか。
バカ売れするとは思っていません。1館あたり月に3セットとか4セットくらいでも十分だと思っています。そこにあることが大事なのです。
なぜならば。
ちょっとした思考実験です。
もしもラストショットブック&トートが100円だったら売れるでしょうか? そりゃ売れるでしょう。原価2000円くらい(本当ですよ)のものを100円なんて掴み取り状態ですね。あっという間に売り切れでしょう。
200円でもそうでしょう。
300円。400円。500円。まだまだお得ですね。
1000円。シルクスクリーンで単純な図柄をプリントしたトートバッグに比べればまだお買い得感がある。
2000円。
そろそろ安さとかお買い得の問題じゃなくなってきますね。手に入る使用価値に対する支払い価格で考えると、取り敢えず見ずてんでも買っとけみたいな爆発的なお買い得感は無くなっている。
3500円。
この辺まで来ると、年収2000万円くらいの人でもないと、ノールックでは買えない。誰でもしばらくは考えますでしょう。
自分はこれが欲しいのか。
自分はこれが欲しいとして、なぜ欲しいのか。
自分はこれを買うことで、何を手に入れようとしているのか。
使用価値を超えるなにかを感じない限り、ブックレットとトートバッグのセットに3500円は払いませんよね。あなたも私も。
でもね、良いですか、私は「これが良い科学館・頑張っているプラネタリウムのミュージアムショップに置かれていることは、ホスピタリティ」だと思う。
何故か。
よほど気合の入った科学マニアのご家庭、親子であっても、特定の科学館に5回も10回も通うなんてことはありません。
うちでさえ、科学技術館や科博や六都科学館や科学未来館、名古屋市科学館、このクラスで3回か4回ですそれぞれ。これまでに。地方の科学館の場合は1度きりであることが多いです。
そして、一般的な家なら小学校高学年にもなれば科学館よりサッカーだ。塾だ。テニスだ。ピアノだ。ですよね?
あなたの子どもの生涯で、子どもとして、どこかの科学館に行って、心の底から楽しんで、今日は素晴らしい一日を過ごしたという思い出を作る機会はせいぜい2回か3回でしょう。
そんな希少な、もしかしたら人生で一度きりかもしれない、素敵な科学館の思い出を、何か形にして持って帰りたい。そういうニーズは絶対にあるはずです。多くはないかもしれないけれど。
そのときに、ちょっと高いかもしれないけれど、心をこめてデザインされて制作されたミュージアムグッズが。大人になるまで手元に残っているようなミュージアムグッズが。大人になってもなお、あの日は楽しかったなあと思い出せるようなミュージアムグッズが。
一つも無いってのは、おかしい。
これはね、ある程度は高くなくちゃだめなんです。たとえ100円や200円で原価2000円のものを手に入れたとして、それは一生の思い出の依代になるでしょうか? ならないですよ。
2000円、3000円という、ちょっと考えるくらいのお金を払うこと、それ自体に重みがあり意味がある。何故ならば、その重さのお金はあなた自身の価値観を示すもの、あなたの一部だから。
あなたの一部であるまとまったお金を科学館に置いて、その代わりに心を込めて作られた何かを持ち帰る。その時、あなたと科学館の間で縁が結ばれる。神社の御札みたいなもんですよ。
そういうものがちゃんとミュージアムショップにあるべきだ。そう思ったからこれを作りました。
科学館の中の皆さん、自分たちが心を込めて運営している科学館に来てくれた子どもたちが最高の思い出を、一生の思い出を持ち帰るならば、その容れ物が必要だと思いませんか?