「ストレートな物言い」と「無礼者」は全く別ジャンルなのです

自分は若い頃から言いにくいことをはっきり言う人間だった自覚があります。勤務先のオーナー兼代表取締役とか、所属研究室の指導教官に対しても「これはダメなんじゃないですか?」とガンガン言ってきました。

ですが、言いにくいことをはっきり言うということと、長幼の序や各自の社会的立場を無視した発話を行うことは根本的に違う問題かと思います。前者は「遠慮の無い発言」ですが後者は単なる「無礼な発話」です。

「遠慮の無い発言」の価値は古代から認められており、例えば中国の歴代王朝には「諫議大夫(かんぎたいふ)」という役職がおかれていました。諫議大夫の役割は、皇帝を諫めるというものです。臣下が言いにくいことを敢えてはっきりと皇帝に言うのが仕事です。唐の2代皇帝・太宗(李世民)には魏徴という有名な諫議大夫がおりましたが、魏徴はその役にある間に李世民を100回以上も諫めたと言います。そして李世民も魏徴には万全の信頼を置いて重用し、その死に際しては深く悲しみました。

ですが、その魏徴も太宗に「世民、あんたバカ?」のような話し方で接したわけでは無論ありません。そんなことをすれば一発で死刑ですよ当たり前です。

大事なのはここです。目下の人間のストレートな物言いを喜ぶ人は一定数おりますが、無礼者が好きという人はまずおりません。

自分がおじさんになった今、その違いを理解出来ていない若者を見ると「あ~あ」と思います。「無礼だけど圧倒的に斬新な視点も提供出来る」ならばまだ救いもあるのですが・・・難しいものです。