scratch day in Tokyo 2018に行ってきた

青山学院大学のサテライト施設「アスタジオ」地下で開催されたScratch Day in Tokyo 2018に行って来ました。

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会場はホールと小さな教室(大学の20人規模の講義をするゼミ室程度)に分かれており、ホールには講演会場とNHKや産能大学や山梨学院大学のブース、体験コーナーがあります。教室の方はプログラミングバトル会場とハッカソン会場。
講演会場ではscratchについてのディスカッションや作品発表が行われます。
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scratchの伝道師、阿部先生が司会。

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小さい方の部屋はこんな感じです。奥がプログラミングバトル会場、その手前がハッカソンコーナー。ショウアンドテルに参加した子たちの一定割合がここに流れてきていました。

個々のコンテンツはそれぞれ白熱していましたけれども、イベント全体としてはもう少しスマートなデザインが出来るだろうなというのが正直な感想です。
こちらのブログでも指摘されていますが、地下会場なのでネット接続が出来ない(窓際でしか4G回線に繋がらない)、すなわち自前simがあってもオフラインモードになってしまいます。ところが事前にそうしたネット環境であるというアナウンスは無かったので、自前PCを持ち込んだけれどもscratchのオフラインバージョンを入れていない、どうしたら良いのという声がありました。
また、ハッカソン会場がものすごく狭くて(それでも前年度の3倍にしたそうですが)、人が入れない。結果として人見知りの子はその密度に気圧されて引いてしまう。私の知っている子で相当にスキルのある子も会場に来ていましたが、ハッカソンに混ざりたいけれども入っていく勇気が無いみたいでずーっと外をウロウロしている、みたいな状態でした。
加えて、子供中心のコンテンツを表参道で開催するわけですから、当然、子供とほぼ同数の保護者も会場に来ます。その保護者が子供と同じようにScratchに興味があるとは限りません(むしろそうでない割合の方が大きいでしょう)。
となると、保護者は会場周辺で3時間半の暇つぶしとなります。しかしながら会場のあるフロアの廊下には座れるベンチは10席弱。しかも電波弱いからスマホでの暇つぶしもきつい。外は雨。うんざりという表情の親御さん多数。
これ、科学館や公園でも似たようなシチュエーションはよく発生しています。以前に研究ノートとして私も論じましたが(「多摩ニュータウン向陽台地区の育児空間の現象学的分析」『多摩ニュータウン研究』12号、2010年、pp58-72)、子供が1時間2時間を過ごす公園においては、保護者に対するアメニティやホスピタリティも重要になります。

とはいえ、大丸公園や若葉台公園にも欠点が無いわけではない。まず指摘出来るのは、子供が遊んでいる間の親のことをあまり深く考えていない点である。どちらの公園にも大型滑り台や砂場の近くにはベンチが設置されているが、日よけが無い為、春から夏の間、親は炎天下のベンチに腰掛けて子供が遊んでいるのを見守ることになる。また大丸公園の場合、ベンチからの死角が多いし、ベンチのすぐ後ろが植え込みになっているので、大量の蚊の襲来にも悩まされることになる。結果、このベンチは親には殆ど利用されていない。

 更に大丸公園では、大型滑り台のすぐ近くに砂場があり、多くの幼児が両者の間を頻繁に行き来しながら1時間、2時間と過ごしているが、両者の間には長い金属の手すりが設置されていて、親の動線を決定的に妨げている(幼児にはこの手すりは移動の障害にならない)のである。しかも砂場前に設置されたベンチは大型滑り台に背を向ける形になっており、このベンチに座って砂場遊びをする子供を見守っていても、子供が大型滑り台に移動すればこのベンチからは全く見えなくなってしまう。

最近は科学館でも親の見守りを念頭に置いたベンチの配置が見られますが(例えば名古屋市立科学館、八王子市こども科学館など)、こうしたデザインも取り入れて会場を設計しておいた方が、scratchというツールやそのコミュニティの裾野は広がるでしょうし、裾野が広がれば頂も高くなるでしょう。

対策としては、よりキャパが大きく回線が太い会場に移転すること、ハッカソン会場をより広く、開放的な空間にリデザインすること(一方向からしか進入出来ないよりは、複数方向から進入出来るように。PCとPCの距離をゆったりめにして、ハッカソン参加者にギャラリーが付けるスペースを確保し、更にファシリテーターを配置してコミュニケーションの方向付けをするなど)、保護者用の待機スペースを大きく取り、そこに物販コーナー(プログラミング関連に限らず、オーガニックフードやエシカルファッションアイテム、ハイエンド文具など、そこそこの単価で粗利が大きなものを置くのオススメです)や各種プログラミング教室のブースも入れて、そこで会場費の一部を捻出するという手もあります。
以上、社会学者・デザイナーから見た課題の指摘と対策案でした。
もちろん、これは趣味の集まりなんだし無料なんだから文句言うなとか、じゃあお前がやれという開き直りもアリです(ファシリテーターでもスペースデザインでもやってくれと言われればやらんでもないですよ。その旨は運営の方にも伝えてあります)。今みたいな感じが最高なんだという価値観もあり。もっと上手くプロジェクトマネジメント出来る人を入れると今の内輪のムラ社会感が無くなってそれはイヤだからこのまま行きたいんだというのも大いにアリ。
好きにやっていったら良いと基本的には思います。
プログラミング教育が広範に(公教育に取り入れられることで)普及し、その中のメジャーコンテンツであるScratchを触る人口が激増すれば(するでしょうが)、今までみたいなScratchムラのノリと新規参入者のコンフリクトは続発する可能性があります。その対応次第でScratchにアンチが大量発生して右下がりコンテンツになる可能性もあるでしょう。そういう時代に向けた準備を多少は考えておいたほうが良いと私は思いますが、そう思わないのも自由。
我々は感じたこと考えたことを自由に発信するし、やる側はそれを読むも読まないも自由。取り入れる取り入れないも自由。
なるようになりますよ。ええ。
改めて阿部先生以下、スクラッチデイイントーキョー2018運営の皆様にお礼申し上げます。