ベン・ホロウィッツ『ハード・シングス』中身は案外真っ当

今さら読んでみましたハードシングス。

テックスタートアップを創業した著者が何度ももう終わりなんじゃないかという経験をしながら、8年後に会社を高値でヒューレット・パッカードに売却するまでの経験を振り返った本です。

一難去ってまた一難、毎日が炎上、一か八かの賭けの繰り返し。そんなストーリー。これ読んだらスタートアップの社長なんか絶対やりたくなくなること請け合い。

そんな本です。

スタートアップは甘くないということを生々しく描いた本として、随分話題になりましたね。この中で著者が語っている教訓の核心は

「スタートアップの社長は誰がやっても上手くいかない。会社が潰れなければ合格点」
「会社が順調な時に成功する経営者と、会社が危機にある時になんとか出来る経営者は別ジャンル」

というものです。

毎日が炎上というのは私も経験したことがあります。あれは本当に疲れる。特に外的要因ではなくボードメンバーが火元と燃料と酸化剤の供給源である場合は(さっさと逃げ出すが絶対の正解)。

さてさてそんな炎上DAYSを生きる中でも社長が絶対にやってはいけないこととして、著者が何度も書いているのは、会社を去る人間に恨まれるようなことはするな、というものでした。

「その理由は、人は働いた日々を全部覚えてはいないが、レイオフされた日のことは必ず覚えているからだ。レイオフされた日のことは細部にわたって覚えていて、その細部が大きな違いを生む。あなたの会社とマネジャーたちの評判は、あなたが毅然とした態度で自分を信じ、自分のために精いっぱい働いた社員たちと向かい合えるかどうかにかかっている。」

「会社に残る人たちは、CEOが同僚をどう扱うのか深く気にかけている。レイオフされる人たちの多くは、今後もあなたより会社に残る社員たちと親しく付き合うので、相応の敬意を払う必要がある。」

「レイオフされた人たちは、今でもCEOや会社と自分は関係があるのかどうか知りたがるだろう。みんなと話すことが大事だ。レイオフされた人たちが車に荷物を運ぶのを手伝おう。彼らの努力に感謝している気持ちを伝えよう。」

「ビル、きみは彼に仕事を続けさせることはできないが、彼の自尊心を守ることは、間違いなくできるんだよ」

「辞める幹部にひどい仕打ちをすれば、その優秀な部下たちが次は自分だと思ってしまう。それは、CEOが発信したいメッセージだろうか?」

などなど。

そういえばこの本、某社の社長の机の横に立ってたけど、買っただけで読んでなかったのかもな。