大澤真幸『社会学史』を叩く同業者たちのストレス度合い

大澤真幸『社会学史』をフロイトのとこまで読みました。

ここまで出てきた思想家はアリストテレス、グロティウス、パスカル、ホッブス、ルソー、ロック、コント、スペンサー、マルクス。

この本、なかなか興味深い受容のされ方をしていて、社会学についての完全な門外漢の方々からは、概ね高評価。あるいは絶賛。読みやすいと。

一方、思想史が専門の人たちからは、読むに値しない駄本だと切り捨てられている。その尻馬に乗る人もちらほら出てきた。

何故かというと、思想史が専門といってもそれぞれに得意領域があるわけです。古代から中世あたりがメインの人、フロイトが専門の人、マルクスが専門の人などなど。

そういう人たちから見れば、「大澤真幸は一知半解のまま論じている」「無茶苦茶な読解だ」「最新の研究動向を知らないのか」となる。

例えば社会契約論あたりがメインの人からすると、ホッブス、ロック、ルソーの読解が最新の動向をきっちり踏まえてなければ、それだけでこの本全体が0点になる。ウェーバーの読解についての大著を発表したばかりの東大の先生が、大澤真幸のウェーバー理解をズタボロにけなしていたり。

面白いですね。嫉妬もあると思います。絶対に。この野郎、またスタンドプレーしやがってとか。
日々の大学業務のストレスもあるでしょう。多分に。てめえ大学辞めてチャラチャラしやがってとか。

私がこの本をどう評価しているかですが、たしかにマルクスとかフロイトとか、飛ばしすぎだろそこはという部分も多々あります。教養として一般の人が読むならともかく、社会学の入門書として学生や院生が読むとすると、指導教員がある程度はガイドラインを引いてあげないと、迷子になりますね。ちょっと危ない本と言える。

でも、社会学史なんて巨大なテーマを一人で書いたら、こうなるのは当たり前なんです。一人で完璧なものを書ける限界を遥かに越えている。大澤真幸を叩いている同業者たちに、じゃあお前が社会学史を書いてみろって言ったら、そりゃあもう絶対逃げます。あれこれ言い訳並べて絶対逃げるね。100%逃げる。

なので、まずは大澤真幸のチャレンジ精神を褒めたい。

そして、「大澤真幸が考える社会学の歴史」として、これはこれで「へえ、大澤真幸はそんなこと考えてるんだ」と色々楽しめるし、そういう読み方をすればとても勉強になる本なので、良いと思いますよこれ。

追記:開沼博が絶賛していてちょっと驚きました。決定版的入門書、ですかねえ???

ホッブズやロック、マルクスやフロイトといった、既存の社会学史ではともすれば脇役扱いされて終わっていた理論家たちを主役級に押し出すように丁寧に触れることで、歴史を鮮やかに一筆書きする。フーコーとルーマンという現代社会学の到達点の描写・解説も明晰(めいせき)だ。

断片的に理解することしか許されなかった社会学の狭き門を多くの人に開く決定版的入門書の誕生だ。

出典

追記2:橋爪大三郎も絶賛しているぞ!? 橋爪大三郎と大澤真幸は仲良しだから・・・かな? 橋爪大三郎って結構、口が悪い人というイメージあったんだけどな。

本書は社会学史のかたちを借りた、社会学の理論書である。これから社会学を学びたいのなら、誰もがまず手元に置くべきだ。日本で、いや世界でも有数の学説史がここにある。どの頁(ページ)からも、社会を思考するスリルが存分に堪能できるだろう。

出典

追記3:ウェーバーまで読みました。楽しいですよこれ。ダン・ブラウンの小説読んでるみたい。まずはエンタメとして読んで、興味の湧いた社会学者については個別に、社会学者からも評価の高い入門書や、なるべく新しい翻訳書に進んでみるのをお勧めします。

追記4:いま現在、大学その他で社会学を教える立場にある方で、もしもこの本が大いに問題があると考えておられるのであれば、それぞれ自分の名前で責任を持って、学生たちにこの本の取り扱い方を発信されるのが本筋かと思います。その媒体は実名SNSでも良いでしょうし、実名ブログでも良いでしょう。講義の中で紹介するのも良いと思います。匿名はてなや匿名SNSや匿名アマゾンレビューで何かゴニョゴニョ言っているだけというのは、ちょっともったいないですよね。折角、学生たちとダイレクトにコミュニケーション出来る(本来ならば)素晴らしい場所におられるわけですから。

追記5:「今現在、博士課程在学中」「博士課程を出たけど仕事が無い」「非常勤講師を掛け持ちして糊口をしのいでいるけど先が見えない」「任期付き専任を渡り歩くのにも疲れた」「やっとのことで潜り込んだ専任だったけど、忙しすぎるし経営がブラック過ぎてつらい」などなど、アカデミック一本のキャリアに不安を感じている方、ご相談ください。お住まいの地域と人柄によりますが、「正社員としてのコンサルタント」のお仕事をご紹介出来る可能性は、何割かあります。社会調査法(量的・質的いずれもウェルカム)と英語が出来て遠距離出張を苦にしないという、社会学徒の強みが生きる場です。ほんと、博士がアカデミックキャリアに行き詰まって自殺したなんでニュースはもう二度と見たくないんで、死ぬくらいなら連絡してくださいね。

 

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