クイア的なファンタジーといえばル=グウィンより河惣益巳ではないか

ル=グウィン『帰還』を昨日読了。

個人的にはフェミニズム小説としてめちゃくちゃ楽しかった。

出た当初(1990年)には上橋菜穂子すら拒絶反応を起こしたという話があって、いかにル=グウィンが思想的に尖っていたのかがわかる。

ただ、ル=グウィンをジェンダー研究から読み解いた論文でテハヌー(1作目の主人公と2作目&4作目の主人公の養女)が竜の化身であって、最後は竜身になって飛び去ることをもって、ル=グウィンの「アースシー」後半がクイア理論を受容していたと主張する論文を掘り起こしてしまったんだが、さすがにそれは強引過ぎる読みだろうと思った。

これ査読付きなんだぜ。落ち着けよ(笑)

クイア的なファンタジーで竜と言えば、個人的には河惣益巳『火輪』(白泉社、1992-1997)を思い出すのだが、河惣益巳が1992年という、ル=グウィンの『帰還』とさして変わらない時期にああいうぶっ飛んだものを描いていたということに驚く。

日本は大学でジェンダー研究を勉強したような人たちではなくて、マンガやアニメにどっぷり浸かって育ったクリエイターがセンスだけでものすごく斬新なものを作ってしまう土壌があるような気がする。

「僕の心のヤバいやつ」についてはよくわからないが、「メイドインアビス」はいずれアカデミックの領域でも論じられるようになると予想しておく。

痛いの怖いから読まないけど。