今日はこの本を読んでました
著者は九州大で博士号を取って玉川大で思想史を教えている人。
日本では哲学の先生というと古今東西の著名な思想家の思想研究(例えば以前にいきなり私をバカ呼ばわりした早稲田大学教授の森元孝さんはアメリカの思想家であるアルフレッド・シュッツの思想を研究するのが専門)がお仕事の中心なのですが、欧米の有名な哲学者はそういう仕事はあまり(というかほぼ)やらないのです。
その代りに何をやっているのかというと、今現在の人類が直面している、にわかにはこれという答えが出ないような問題を考えているという、当たり前の話になります。
この本はその中でも、この20年ばかりで旬とされる人たちとその取り組んでいるテーマをコンパクトに紹介するものです。ガイドブック的な本です。
例えばAIの問題、バイオテクノロジーの問題、宗教(特に原理主義)の問題、インターネットの問題、経済格差の問題。
哲学者というのは本来、その時代においてこれは大切だと思われるホットなトピックに取り組んで考え方の藪こぎをするものですから、そういう視点から言えば、富も権力も名声も持った超勝ち組の老害論客とされている最近の内田樹などは、その論の内実はどうあれ、思想家としては確かに正しいあり方です。
そこは私は評価していますよちゃんと。訓詁学と学会政治で定年まで専任教員やるだけのぶら下がりサラリーマン哲学研究者より、彼の方がはるかにマシ。税金もいっぱい納めてくれているし。
話を戻しますと、それで今の世界の一線の哲学者たちが考えているテーマとそのここまでの展開をこの本で読んだ限りでは、哲学は大学よりその外でやるもんだよなあと感じました。
それぞれ現場を持っている人が、その現場と研究室の行き来の中で考えることがやはりリアルだし深い。
もう一つ感じたのは、そういう最前線の哲学的トピックとその筋道を、私は哲学の学会とか出入りしなくても、SNS経由でほとんど追えていたということ。あるいはSNS上での色々な人との対話の中で似たような思考を作り上げていたということ。
これから集中的に売り出されるであろうカンタン・メイヤスーとかマルクス・ガブリエルの新実在論なんか特に、ポモはダメだと気づいた人が認知科学や人工知能や脳科学神経科学といった自然科学系の研究に接してこの10年考えていれば、そりゃそれ以外の話の展開は無いだろうというくらい当たり前の話で、何でコレがそんな新しいなんて騒がれるのよと思ったですはい。