ローマ風の名前はどれも似ているのでなかなか識別が難しかったのですが、内容は結構面白かったですこの本。
私はイギリス近代史ゼミだったので古代史は大学では殆ど勉強しませんでしたし(古典古代史は高橋秀先生でした当時)、塩野七生は生理的にどうしても無理なので、古代ローマって疎遠だったんですよ。今まで。
この本は2013年に出ているので、最新の研究まで取り入れて、西ローマが滅んだプロセスを解説しています。
中でも重要かなと思ったのは以下の諸点。
・古代ローマにおいて帝国の外縁は軍団を常時駐屯させられる兵站線の限界が規定していた。
・帝国の外縁は現在の領域国家のような明確な線ではなく、ローマ市民権所持者とそうではない人々が混在する「ゾーン」になっていた。
・誰でもローマ軍団で軍務を務め上げることでローマ市民権が付与され、ローマ人となることが可能だった。
・3世紀以降はドナウ流域出身の者が軍務を通じてローマ人となり、帝国の権力中枢に入り込むようになった。4世紀以降はこれがガリアやブリタンニア出身者にも拡大し、これらの地域出身の有力軍人が皇帝となることも珍しくなかった。
・いわゆるゲルマン人の大移動は、統一的な「ゲルマン人」アイデンティティを持った集団が一斉に帝国に侵入したのではなく、それぞれがゲルマン系言語を用いる諸部族が離合集散を繰り返しながら帝国に侵入していった過程。
・西ローマ領域に侵入したゲルマン系諸族が「ローマ市民権」や「ローマ文化」を欲しなくなった時に、帝国中枢ではゲルマン人への反発が強まり、これが結果としてゲルマン系の人材に依存していた帝国の支配力を弱めて、西ローマの崩壊に繋がった。
なんとなく脳裏にドナルド・トランプの顔が浮かんだりして。