多摩ニュータウンの第2住区は「長峰」と名付けられています。上谷戸(かさやと)と竪谷戸(たてやと)という二つの大きな谷戸に挟まれた丘の上を造成して造られた街です。上谷戸は現在は「上谷戸親水公園」となっていますが、竪谷戸は埋め立てられて尾根幹線道路になっています。
さてこの長峰という街、多摩ニュータウンの中でも景観という面では飛び抜けているというのが私の評価です。遠くから眺めても良し、中を歩いても良し、そして中から外を眺めても良し。三拍子揃っているところが凄い。遠景ならば第1住区の向陽台も素晴らしいですし、街中の景観もまずまずなのですが、長峰には向陽台よりも急な斜面を生かしたダイナミックな空間構成があります。加えて三沢川を挟んだ反対側の清水谷戸や小田良の斜面緑地を借景にした抜群の奥行きを持つ緑の景観は、贅沢過ぎて倒れてしまいそうです。ほんでもって、更に西を見れば丹沢山塊や富士山まで見えるんですからね。
長峰の景観の素晴らしさは、アッシジを思い出させます。イタリアはウンブリア州の古都。かの聖フランチェスコの故郷であり、世界遺産にも指定されているあのアッシジ。あの街も南に面した丘の斜面に建設された街で、下から見上げても綺麗だし、街中からの眺めも素晴らしい。
多摩ニュータウンのアッシジ。私はそこまで言っても良いと思います。チャンスさえあれば長峰の戸建て住宅街に家を手に入れて住んでみたいですね。
以下、画像の解説です。
画像1:若葉台から見た長峰遠景。間には原っぱしか無いように見えますが、実はこの間に戸建て住宅街がずい~っと広がっている上に、上谷戸川も挟んでます。
画像2:アッシジの街。ウィキメディア・コモンズより。
画像3:公団の中層マンションを横から見る。結構面白い形をしてます。
画像4:長峰小学校前の広場。奥に見えるのは吊り橋構造の歩道橋で、その更に奥には駒沢女子大周辺の斜面緑地が見えてます。この奥行き感と借景が美味しい。春には稜線沿いに桜が満開。
画像5:戸建て住宅街の北側には、自然地形をそのまま生かした丘陵部に、ゆったりとした間隔で高層の集合住宅が建てられています。
画像6:民間の開発ならこんな贅沢な土地利用はあり得ないでしょうし、全部切り土して平べったくしちゃったでしょうね。日本の集合住宅史に残る傑作の空間設計。
画像7:街の西端の並木道。奥に見えるのは三沢川対岸の丘陵地帯。
画像8:街区公園「光の広場」。奥に見えるのは民家ですよ。
画像9:長峰小学校西側のスロープ。