プルトニウム38.5キログラム

 北朝鮮が六カ国協議の合意に基づいて提出した、核(原子力発電所および核兵器)開発関連の報告書の内容が、徐々に明らかになっています。

 例えば今日の報道では「プルトニウムを38.5キログラム抽出して、そのうち26キログラムで核兵器を作った」と。

| 毎日新聞

 私、これがこんなに静かな扱いになっていることに驚きを禁じ得ません。NHKのニュース番組でも、ウナギの偽装とかエビ養殖詐欺の話ばかりで、北朝鮮関連ニュースといえば拉致被害者家族の方々がアメリカに陳情をしたとか、アメリカの融和策を批判したとか・・・・。まあ、たしかにテレビ映えはそちらの方が遙かにするとは思いますよ。ですけれども、そればっかりしつこく流すというのは何かおかしくないか?

 この報道のバランスの悪さは何なのでしょうか。国内の原子力発電所のインシデント(事故未満のトラブル)なら、一次冷却水が漏れたとかいうどうでも良いようなネタまで几帳面に採り上げる毎日新聞さんが、一応はちゃんと飛ぶ大陸間弾道ミサイルを持っていて、日本国とは極めつきに不仲で、国内情勢も不安定極まりない国が40キロ近くも核兵器用プルトニウムを持っていたというのに、ほとんど眉一つ動かしていないではないですか。

 例えば北朝鮮が抽出したというプルトニウムの中身はどんなものなのか。

 六ヶ所村関連の勉強をしたときに知ったんですが、原発で燃やす核燃料としてのプルトニウムと、爆発させて大量殺人をする核兵器の材料としてのプルトニウムでは、精製度が全然違うんですね。六ヶ所村再処理工場反対運動の方々は、そこを敢えて無視して「六ヶ所村再処理工場で作るプルトニウムは核兵器の材料になる」と主張しておられますが、いえいえいえ。ピュアオリーブオイルとエクストラバージンオリーブオイルよりも遙かに作り分けは難しいです。ワインとブランデーくらいは違うでしょう。

 ならばこそ、日々、日本の原発を徹底監視しておられるマスコミの方々には、北朝鮮の作ったプルトニウムが実際に核兵器に使える代物だったのかくらいはきちんと取材して報道して欲しいです。本当に。

 そりゃあ私だって、仮に北朝鮮が兵器級プルトニウムも、ちゃんと動く起爆装置も、ちゃんと飛んで的に当たる大陸間弾道ミサイルも持っていたとしても、それを日本に向けてぶっ放す可能性がゼロに近いことは解ってますよ。なにしろ日本列島には彼らの同胞がわんさか居て、日本列島からは同胞の仕送りがいっぱい送られて来るんですからね。

 とはいえ、これはやはりきちんと報道すべきニュースだと思います。通信社から入ったネタをそのままコピペするだけでなくね。

 それに、反原発運動の方々も、ケチなMOX燃料(ウランとプルトニウムを混ぜ混ぜした核燃料)どころか兵器級プルトニウム製造に手を染めていた北朝鮮をスルーするのはいかがなものか。「巨悪を暴く為」に宅配便配送所に不法侵入するグリーンピース・ジャパンの正義の闘士の皆さんは、この次は是非とも北朝鮮の核関連施設に侵入して、核兵器開発の真実を暴くくらいの正義感を見せて欲しいです。そうでしょ、星川さん。

 去年、ホクレアのクルーが長崎・広島で原爆の記録を目の当たりにして強い衝撃を受けていたことを思い出してください。日本列島は人類史上唯一、核兵器による攻撃を経験した場所です。その外道さ加減を世界一良くしっているはずなんです。なのに、何故もっと怒らないのか。核燃料と核兵器では人道上の重大さはまったく違うではないですか。核兵器開発をしようとしたことに断固抗議し、核兵器関連の技術や材料、施設を徹底的に廃棄していただくよう、強い決意を持って臨まねば。

 日本列島人、核兵器のイケナさを忘れてしまったんじゃないか?