ゴミ拾いからわかったのは

 平日はだいたい平均して2時間、ゴミを拾って街を歩いています。

 というか、子供を連れて散歩しながら、ゴミを拾っています。毎日2時間。

 2時間で大きめのレジ袋がいっぱいになります。毎日それくらい集まってしまうということは、我が町にかかる汚染圧力は結構強いということです。賽の河原な気分を味わう毎日です。拾っても拾っても、翌日には・・・・なんて世界じゃないっすよ。

 拾って1時間後には吸い殻だの空き缶だのが同じ場所に散らかっている。ざけんな。

 しかしながら、こうやってゴミ拾いをしていると、人間の行動というものが以前よりも深く理解出来るようになってくる、というのもまた事実ではあります。一例をご紹介しますと。我が街で最も汚されやすい場所を以下に示してみます。

A) 公園のベンチ周辺
B) バス停周辺
C) スーパーの納品口周辺
D) 大通りの歩道

 以上から判るのは、街を汚しているのは基本的に「通りすがり」の連中だということです。公園のベンチを考えてみましょう。公園のベンチには色々な人が座りますが、タバコを吸っている人というのは、実は限られた層だけなのです。具体的に言えば、どこから来たのかよくわからないおじさんね。ニュータウンのマンション街の中にある公園のベンチで、スーツを着たおじさんが疲れた表情でタバコを吸っているわけです。で、半分くらいはそのまま吸い殻を捨てて立ち去る。

 例えばタクシーの運転手。外回り営業のおじさん。そんなとこでしょうか。とにかく住人じゃないです。よそから来た人たちです。

 一方、バス停や大通りの歩道を汚すのは住人たちです。住人たちなんですが、自分の家からは離れた場所なんで、気軽に吸い殻や空き缶を捨てるわけです。スーパーの納品口周辺もそうですね。納入業者がやっているんだと思います。納入業者も、所詮は自分の街じゃないですからね。ただ、これについては特効薬があります。スーパーに「納品口周辺が汚い」と苦情を入れるのです。まあ、普通のスーパーなら店長激怒→納品口周辺を店員が清掃→納入業者に厳重注意となりますね。実際、私がスーパーに苦情を入れて1週間経ったら、もう納品口周辺は綺麗になっていました。

 店長の権力、かくのごとし。

 更に私は、興味深い現象に気づきました。我が街は一戸建てが集まる街区、分譲マンションが集まる街区、賃貸マンション街区の三つから成っているのですが、吸い殻の数で言うと・・・

一戸建て街区<<<<<分譲街区<<賃貸街区

 一戸建て街区は居住人口が少ないですから、モラルレスなスモーカーどもの絶対数が少ないというのもあるでしょうが、それにしても一戸建て街区の吸い殻の少なさは突出しています。よく観察してみると、住民の方々が自分の家の周りをたまに掃除しておられるのです。

 分譲街区も結構少ないです。突出して多いのは賃貸マンション街ね。実は賃貸マンション街は住人の入れ替わりが激しくて、昔からの住人が4割、入居して2年くらいでどこかに出て行ってしまう住人が6割というような街なんです。

 ここから推測出来る図式は、次のようなものになります。すなわち、街と自己が不可分であると考えている度合いが強いほど、人は街を汚さない。考えてみれば当たり前の話ですが、問題は、昨今の日本では人と街、人と土地の縁を切り離すのが良いんだという考え方が侮れないこと。つまり、気軽に住む土地を変える、家でも土地でもどんどん売り買いして市場を「活性化」させると、景気が良くなってみんな幸せになるという妄想があるということです。

 実際のところ、それで幸せになれそうなのは、投資信託を買ったりデイトレーディングをしたりという、言い方は悪いですが「あぶく銭のやり取りを楽しんでいる」一部の人々だけだと思うのですがね。この手の連中は、職業や住み処はいくらでも取り替えが効くし、じゃんじゃんみんなで転職して引っ越しした方が適材適所になって良いんだと考えます。ですが・・・・どうですか皆さん。転職、引っ越し。そんなに好きですか? 疲れるだけじゃないかとか思いませんか?

 いやまあ、転職でも引っ越しでも、やりたい人はじゃんじゃんやったら良いんですよ。やりたいなら。ただねえ、それで街を使い捨てにするのは止めて欲しいんだな。街は鼻かんで捨てるだけのティッシュペーパーとは違いますからね。あなたにとっては、たまたま人生の一時期2年くらい通りがかっただけの場所かもしれませんけれども、私たちにとっては、そこで子育てしたり、老いて死んだりする為の神聖な場所でもあるわけで。他人の家のベビーベッドや仏間に空き缶や吸い殻捨てないでしょ、普通。

 前にも書きましたかね。私、横浜でナイノアさんに尋ねたんですよ。二人きりの時にね。あなた、日本は美しいって散々言ってるけども、本当にそう思ってるのかって。彼の返事はたしか、こんなようなものでした。

Some islands are very beautiful. Some islands are not.

でも、それはあなた達の責任でしょ。彼の目はそう語っていました。だから、せめて私は自分の街だけでもビューティフルにしておくつもりです。「ま、少なくとも俺の街はビューティフルだけどね。」と言えるように。